野党は何を政策の「柱」に掲げるか

 これを、約束通り消費増税するが借金返済ではなく人材投資に使うと言うことで、景気への影響を小さくすることができる。一方で、予定通り税率は引き上げるとする事で、財政再建派も何とか納得する。野党からすると、安倍首相を批判するには、消費増税に反対する以外に道はなくなるが、国の借金が増え続ける中で、増税反対に舵を切る事は難しい。野党にとっては、何を政策の柱として掲げて選挙を戦うか、非常に難しくなったわけだ。

 解散に「大義がない」と批判してみたところで、元々の反安倍票は取り込めても、浮動層には響かない。森友学園や加計学園問題の追及は首相にとっては厳しいが、だからと言って選挙で野党に投票する理由にどこまでなるかは不透明だ。アベノミクスに対する対案を出すには時間がなさすぎる。

 かといって、安倍首相が打ち出した「人づくり革命」や「生産性革命」にどれだけ具体性があるかとなると、心もとない。会見でも安倍首相は「国民の皆様の支持を頂き、新しい経済政策パッケージを年内に取りまとめる考えであります」と述べるにとどめ、具体策は選挙後に先送りしている。

 多くの国民が望んでいるのは、経済成長の恩恵が自らの「懐」に循環してくること。つまり、給料などの所得が増えることだ。安倍首相は2014年以降、「経済好循環」を掲げ、円安などによる企業収益の増加分を積極的に賃金に回すよう経済界に働きかけている。春闘では4年連続でのベースアップが実現しているが、まだまだ「所得が増えた」という実感には乏しいのが実情だ。

 この「実感」を裏打ちする統計がある。9月1日に財務省が発表した法人企業統計では、企業(金融保険を除く全産業)の「利益剰余金」、いわゆる「内部留保」は2016年度で406兆2348億円と、初めて400兆円を超え、過去最高となった。アベノミクス開始以降、4年間の間に100兆円も増えている。率にして1.3倍だ。ところが企業が支払った人件費の増加は4年間で2%に過ぎない。

 アベノミクスの恩恵を企業は溜め込むばかりで、なかなか設備投資や人材投資に回していないのである。

 こう書くと企業経営者からは批判が上がる。いやいや企業の人件費は負担は決して軽くない。社会保険料の企業負担分の増加などもあり、人件費は増えている、というのだ。

 確かに、企業が生み出した付加価値に占める人件費の割合、いわゆる「労働分配率」は67.5%に達しており決して低くない。付加価値の総額は298兆7974億円で、そのうち人件費に201兆8791億円が回っている。問題は、日本企業が生み出す「付加価値」そのものが少ない、ということだ。