衆議院解散を正式表明した安倍晋三首相(写真:毎日新聞社/アフロ)

消費税の使い方が解散の「大義」に

 誰も異論のない「人づくり」を掲げて、安倍晋三首相は衆議院の解散・総選挙に踏み切った。ここ3年、政策の柱としてきた「働き方改革」の総仕上げとも言えるが、これで日本経済は成長力を取り戻すことになるのか。

 9月28日に召集された臨時国会の冒頭、衆議院は解散された。10月22日投開票で総選挙が行われる。突然の解散総選挙に野党側からは「大義なき解散」といった批判の声が上がったが、解散前の9月25日に行った記者会見で安倍首相は、まがりなりにも解散に踏み切る理由を説明した。

 「この5年近く、アベノミクス改革の矢を放ち続け、ようやくここまで来ることができました」

 安倍首相はアベノミクスの成果を自賛した後で、こう付け加えた。「今こそ最大の壁にチャレンジするときです」

 安倍首相が言う最大のチャレンジとは何か。

 「急速に少子高齢化が進むこの国が、これからも本当に成長していけるのか。この漠然とした不安にしっかりと答えを出してまいります。それは、生産性革命、そして人づくり革命であります。この2つの大改革はアベノミクス最大の勝負です」

 そのうえで、2020年度までの3年間を「生産性革命集中投資期間」と位置づけ、企業に設備投資や人材投資を促していくとし、税制や予算、規制改革を大胆に実施していくことを表明した。

 では、なぜ解散なのか。安倍首相は、2019年10月に予定する消費税率10%への引き上げで生まれる財源を「人づくり」に充てるとした。現行の8%から2%引き上げ、5兆円強の税収増を見込むが、現状では5分の1は社会保障の充実に使い、残りの5分の4は借金の返済に充当することになっている。この借金返済分の一部を「子育て世代への投資」などに充てるよう変更するとしたのだ。国民との約束を変更するのだから、解散総選挙で「信を問う」のは当然のことだ、という論理である。

 選挙を戦うに当たって掲げた「大義」としては見事という他ない。安倍内閣のブレーンたちの間では今年6月ごろから、消費増税の先送りを主張する声が強まっていた。回復途上にあるとはいえ、まだまだ力強さが足らない景気に悪影響を及ぼすというのがその理由だ。だが、それでは財政再建派を完全に敵に回すことになる。野党からも「約束を反故にした」と批判されることが明白だった。