入社10年目の女性が「戦線離脱」できるか?

 このタイミングで仮に結婚したとしても、すぐに子どもを出産するという選択にはなかなかならない。子育てと仕事を両立するというのは至難の業だからだ。日本の伝統的な大手企業では、入社5年から10年くらいにかけてが、もっともバリバリ働くことを求められる年頃。その間に出産で「戦線離脱」するというのは、働いている女性にとっても、なかなかできる決断ではない。同期が主任などに昇格する中で、仕事を休んで出産するとなれば、後れをとるのは必至だからだ。

 最近は産休や育休など、制度を整える企業が増えているが、正直言って、入社5年でまだ職場に確固たる「居場所」を築けていない段階で、産休取得に踏み切るのは躊躇する。そんなことから、働く女性の出産年齢は「限界」に近い30代半ばへと上昇していっているのだ。

 産休や育休を取るにしても、結婚して妊娠を考える前に、まずは会社で実績を上げ、産休を取っても戻って来られる場所を確保しておきたい、そんな意識が働く女性を支配しているようにみえる。

 女性が伝統的な日本企業で活躍するうえで、出産が大きなハードルになっているのは間違いない。男女雇用機会均等法以降、表面上、女性と男性の職場での活躍機会は「平等」になったため、女性が職場で評価されようとすれば、「男と同じように」働くことが暗に求められた。筆者がかつて勤めていた新聞社では、活躍して出世する女性記者は「男同様」もしくは「男以上」に働いており、結婚や出産を諦めていた人が少なくなかった。もちろん、子どもを産まないという選択も当然、尊重されるべきだが、生みたくても仕事の仕方が過酷で、生むことが難しいという現実もあった。

 安倍晋三首相が女性活躍促進を掲げて、産休・育休制度の拡充や保育所の整備などに力を注いだ結果、いわゆる「M字カーブ」は急速に解消の方向に進んでいる。女性の就業率を縦軸、年齢を横軸にしたグラフを描いた場合、出産して育児をする30歳から40歳にかけて就業率が低下、Mの字形の曲線になっていた。これがここ数年で急速に台形型に変わってきているのである。

 だが、その一方で、平均出産年齢はジワジワと上昇が続いている。1人目の出産年齢が上昇すれば、2人目、3人目を生むチャンスは必然的に低下する。つまり、初産年齢の高齢化は少子化の一因でもあるわけだ。

 サテライト・オフィスや自宅での労働が可能になるなど、女性のライフスタイルに合わせた働き方を取り入れる企業も増えている。だが、最大の障害になっているのは、終身雇用を前提にした年功序列型の人事制度が根強く残っている日本の伝統的な大企業が求めているキャリアのあり方が、女性のライフステージとどうもかみ合わないことだ。会社として最も使いやすい年齢と、女性の結婚・出産年齢が重なってしまうため、仕事か私生活か、という二者択一を女性社員に迫っている。もちろん、結婚したら会社を辞める「寿退社が当たり前」だった「過去」を持つ会社は、今でもそうしたムードを引きずっている。