不妊治療に取り組む夫婦は多い(写真:PIXTA)
不妊治療に取り組む夫婦は多い(写真:PIXTA)

体外受精で生まれた子どもが5万人を超えた

 日本経済新聞などの報道によると、2016年に体外受精によって日本国内で生まれた子どもは5万4110人と2015年に比べて3109人増え、過去最多を更新した。日本産科婦人科学会がまとめた調査結果として報じた。2016年の総出生数は97万6978人だったので、18人に1人、5%超が体外受精で生まれた計算になる。

 不妊に悩む夫婦は6組に1組とも言われる。不妊治療を受けている人は正確な人数は分からないものの、女性だけで40万人を超えるという推計もある。また、不妊治療の費用の一部を助成する国の制度を受けた件数は2013年度で14万8659件にのぼっている。今や、不妊に悩んで治療を行い、体外受精で妊娠して出産するケースはまったく珍しくない姿になっている。

 不妊に悩む人が増えている背景には、昔に比べて治療が普及したため、問題が顕在化したこともあるが、不妊自体が増えているのも間違いない。ひとつは晩婚化やライフスタイルの変化によって出産しようと考える年齢が上昇していることから、妊娠しにくくなっていると指摘されている。

 第1子を出産する人の年齢は2016年の全国平均で30.7歳。1950年に24.4歳だったものが年々上昇、2011年以降は30歳台が続いている。一般的に年齢が上昇すると妊娠する力も低下するとされ、特に35歳以上になると格段に妊娠力が落ちると言われている。

 これは体外受精でも同様で、国の公費助成も、比較的成功率が高いとされる42歳までの女性に対象を限定している。2016年は過去最多の44万7790件の体外受精が行われたといい、その結果の出生数が5万4110人なので、平均の体外受精による出産成功率は、決して高いとは言えない。

 女性の出産年齢が上昇しているのと、働く女性の増加にはもちろん因果関係がある。大学を卒業して働き始め、5年くらいたった時点で結婚や出産を考える女性は少なくないが、入社5年目くらいになると、仕事も任されるようになり、責任も増してくる。中堅社員として活躍が期待され始める時期と重なるのだ。

次ページ 入社10年目の女性が「戦線離脱」できるか?