ほとんどの企業は「再雇用」で対応

 ほとんどの企業は再雇用で対応しており、定年を65歳以上としている企業は16%、定年を廃止している企業は3%にとどまっている。年功序列型賃金の中で、高齢社員の給与は相対的に高い。それをそのまま5年間延長しては、企業の採算は大きく悪化してしまう。高齢者よりも、給与が低くてバリバリ働く若手社員を採用したい、というのが企業の本音なのだ。

 政府が高齢者雇用を企業に求めているのは、高齢者に活躍の場を与えよう、という表向きの理由からだけではない。年金の支給開始年齢が段階的に65歳に引き上げられており、定年から年金受給までの「空白期間」を作らないようにしたいというのが本音だ。つまり、年金財政という政府の懐事情を優先させるために、企業に雇用維持を求めているわけだ。

 少子高齢化が進む中で、それも致し方ないことだと言えるかもしれない。企業が「再雇用」を選択するのは、苦肉の策とも言える。再雇用ならば企業に利益をもたらす人材にはそれ相応の給与を支払い、逆に長年勤めただけで高給を貪ってきた人は「市場価格」まで引き下げることができる。

 だが、公務員の定年を引き上げるとなると話は別だ。なぜなら、勤続年数に応じて給与が上がっていく仕組みが完璧に出来上がっている。しかも、よほどの事がない限り、降格されることはない「身分保障」がある。つまり、定年を延長すれば、その時点の給与水準がさらに5年間続くことになるわけだ。つまり、公務員人件費は大幅に増える。もちろん全て税金で賄うことになる。

 当然、単純な定年延長には国民から批判の声があがることは、定年を延長したい官僚たちも十分に理解している。メディアの報道では「役職定年制の導入で総人件費を抑制することも検討」といったエクスキューズが書かれている。さらに、国家公務員だけでなく、地方公務員も定年延長の対象だとされている。各自治体が国の制度を基準に条例で決めているので、国の制度を変えれば、地方自治体も変わるという「論理」である。自分たちだけが得をするためにやっているのではなく、全国の地方公務員も得をするのだ、という「仲間づくり」である。

 国と自治体を合わせれば公務員の総数は330万人にのぼる。決して霞が関にいる高級官僚だけが得をするわけではない、と言いたいわけだ。公務員給与の話になると、自衛官など現場の最前線にいる「薄給で国のために尽くしている」人たちがすぐに引き合いに出される。毎年恒例の公務員給与の引き上げでも、現場の待遇改善が金科玉条のように主張される。だが、その実、最も待遇改善の恩恵を受けているのは、現場から遠い霞が関の官僚たちだ。今回の定年延長でも同じことが言えそうだ。

 さらに驚くべき「論理」を駆使して定年延長を正当化している。政府が率先して定年を引き上げれば、民間企業にも定年延長の動きが波及する、と主張しているのだ。自民党の「一億総活躍推進本部」が今年5月に行った提言にはこう書かれている。