厚生労働省が設置した「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」懇談会のメンバーとして報告書をまとめられました。

経営共創基盤(IGPI) CEO
1985年東京大学法学部卒業。同年ボストンコンサルティンググループ入社。1992年スタンフォード大学経営学修士及び公共経営課程修了。2001年コーポレイトディレクション社長を経て、2003年に産業再生機構設立時に参画しCOO(最高執行責任者)に就任。2007年に解散後、経営共創基盤を設立。著書に『選択と捨象』、『IGPI流 ビジネスプランニングのリアル・ノウハウ』、『なぜローカル経済から日本は甦るのか』、『稼ぐ力を取り戻せ!』など。
冨山:20年後の働き方としては私のイメージはああいう感じです。今回の懇談会で良かったのは、年代も多様でしたが比較的若い人が多かったことです。政府の審議会のメンバーは圧倒的に高齢者が多い。とくに労働系の分野は顕著です。働き方改革は長期的課題なのに、20年後にこの世にいない重鎮ばかりで議論をしても仕方がないと思っていました。また、メンバーの立場もいわゆる大企業の経営者代表や労働者代表といった、今では勤労者全体の2割しか代表しない人たちではなく、多様な働き方をしている人が集まった。いわゆるエリートのような職種から普通の庶民が働く会社まで、幅広い声を拾えたのは良い人選だったと思います。まあ、私もたくさん政府の審議会の委員などを引き受けていますが、高齢者の部類に入ったのは初めてでしたね。
「労使対立」という枠組から外れる人が急増
報告書では自立した働き手が増えていくという流れで書かれていますが、連合などからは、労働者が自立することなどあり得ないという批判がされています。
冨山:現実問題として、新卒一括採用、終身雇用年功序列型で名実ともに働いている人の数はどんどん減ってきています。多くの人は非正規として働いているか、中小企業の流動性の高い労働市場の中で働いています。そうした働き方が増えたのは政策のせいではなく、世界的に起きている現象で、社会民主主義的な政治体制のヨーロッパでもそうなっています。イデオロギーの問題ではなく、技術革新やグローバル化、デジタル革命によって産業構造が変化したことが大きいのです。
もともと、労使対立というフレームワークは古くからあったわけではなく、資本集約産業が隆盛を極めた19世紀後半から20世紀前半に出来上がったものです。ILO(国際労働機関)の歴史とも重なります。その時点では、「疎外されている労働者」をいかに資本の横暴から守るのかという問題は確かにありました。資本という希少かつ決定的な生産要素を握っている資本家は強かったのです。つまり労使対立を前提とする枠組みは意味があったわけです。
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