女性活躍は経済的に「プラス」

 それが大きく変わったのが第2次以降の安倍内閣である。政権が発足すると安倍首相は、まっ先に「女性力活用」を打ち出す。しかも、安倍首相は女性の活躍を「社会問題」として捉えるのではなく、「経済問題」として捉えていると当初から発言している。つまり、「男女同権」といった旧来の権利意識から女性活躍を訴えるのではなく、女性が活躍することが経済的にプラスになる、という「実利」を訴えたのだ。

 さすがにその後、女性の「活用」という露骨な発言は止め、「女性活躍推進」という言葉がもっぱら使われるようになった。だが、人口減少が鮮明になっていく中で、女性を「労働力」として「活用」することに着目したのは正しかった。日本の人口は2008年の1億2808万人をピークに減少し始め、今年8月1日現在の概算値は1億2649万人となっているので、すでに159万人も減少している。女性の就業率が上昇しなかったならば、今以上の人手不足になっていたのは間違いない。

 安倍内閣は女性活躍を推進するための施策として、産休・育休制度の整備や保育所の増設に取り組んだ。働く女性が増えたのと同時に都市部を中心に保育所不足が顕在化、待機児童問題がクローズアップされた。

 2016年には「保育園落ちた日本死ね!!!」と題する匿名ブログが話題になり、待機児童問題解消に向けて行政を突き動かしていくことになる。

 厚生労働省のまとめによると、2015年に253万人だった保育所等の定員は、2018年には280万人となり、3年で1割以上増えた。これによって待機児童は2016年4月の2万3553人から2018年4月は1万9895人に減少した。

 女性の就業者の増加は、結婚して出産したら仕事をいったん辞めるという慣行が減り、産休や育休を使って、仕事を続けるという選択肢が広がったことも大きい。年齢別の就業率をグラフにした場合、出産や育児の期間は退職するため、30歳くらいから40歳くらいまで就業率が下がる「M字カーブ」が問題視されてきた。それがここへきて「M字」が「台形」に近くなり、「M字カーブ」問題はかなり解消されつつある。

 男女合わせた就業者数も雇用者数も過去最高を更新し続けている。にもかかわらず有効求人倍率は7月で1.63倍にまで上昇している。1974年1月に付けた1.64倍以来44年ぶりの高水準だ。

 嘱託社員などとして働いている現在69歳から71歳のいわゆる「団塊の世代」が今後、本格的に労働市場から退場していくことになれば、人手不足はいよいよ本格化する。もちろん人口減少も止まらないので若年層の労働力が増える見通しも立たない。

 政府は単純労働として受け入れを禁じてきた分野での外国人の雇用を可能とする新たな在留資格制度の導入を決め、秋の臨時国会に法案を提出する運びだ。だが、外国人労働力が増えたとしても、人手不足がそれで解消されるわけではない。