これまで労働政策を決めるのは「労政審」だった

 働き方改革実現会議で、「残業の上限規制」について方針を決めることになれば、画期的な事になる。というのもこれまで労働政策を実質的に決めるのは厚労省に設置されている「労働政策審議会(労政審)」だった。この審議会は労働側と使用者側、それに公益代表の「三者」から同数の10人ずつが出され、そこで合意を得ることが前提だった。いわゆる「三者合意」でこれが労働政策を決める根幹として長年守られてきたのだ。実はそこには「政治」の代表は入れない。このため、いくら首相が「労働改革」と旗を振ってみたところで、審議会が動かなければ何も進まなかったのである。

 実現会議で決めた方針を審議会で議論するにしても、審議会の権限が大きく変わることは間違いない。これまでの三者合意を前提にした労政審は、過去の積み重ねの上に成り立っており、大胆な改革は事実上不可能だった。実現会議が大方針を決める「場」になれば、日本の労働政策の決定方式が根本から変わる。

労働政策決定が官邸主導に変わることへの抵抗も

 この点について最も敏感に反応しているのが日本共産党だ。「働き方改革 官邸主導」「実現会議、公労使3者構成崩す」と題した記事を、しんぶん赤旗が8月13日に掲げた。

 そこでは、「労働政策を公労使3者の合意を得て進める『3者構成原則』を骨抜きにして、政府主導で決定する狙いが鮮明です」と分析。また、「労政審では厚労省が事務局を務めますが、この点でも専門の厚労省を排除して官邸主導で進める構えです」としており、厚労省内の左派官僚の意見を色濃く反映しているとみられる。労政審を中心とした従来の政策決定が官邸主導に変わることに明らかに抵抗している。

企業の収益回復のための労働改革は待ったなし

 確かに、まず労働者寄りの政策で実現会議が方針を決める母体としての実績を作れば、次に労働者に厳しい改革もこの会議で行うことが可能になる、と見ることもできる。三者合意の労政審ではなかなか難しかった抜本改革が、政府主導の実現会議でできるようになるかもしれないのだ。

 安倍内閣が、こうした「う回戦術」を狙っているのかどうかは分からない。だが、アベノミクスの中で掲げてきた「稼ぐ力を取り戻す」という基本方針が変わってないとすれば、企業に収益性を回復させるための労働改革は待ったなしということになる。労働者の待遇改善というアメの後には、既得権を持った「正社員」や「労働組合」には厳しい、痛みを伴う改革が待っているのかもしれない。