残業規制と高度プロフェッショナル制度はセット

 そこで不可欠なのが業務改革である。余計な会議や仕事のプロセスを思い切って省き、同じ成果を上げられる工夫をする。また、一人ひとりの仕事を明確にすることで、二重三重になっている仕事を止めることだ。

 しばしば指摘されることだが、欧米企業の方が労働時間が少ないにもかかわらず、生産性が高いのを見れば、まだまだ日本企業に生産性向上の余地はある。

 さらに重要なのは、業務の見直しで生産性が上がり利益を維持できたならば、その分、賃上げを行うべきだ。残業代が減って、その分が企業の内部留保に回っては何にもならない。きちんと、所得が維持される、もしくは生産性が上がった分だけ、さらに基本給やボーナスが上昇する仕組みを早急に取り入れる必要がある。これは経営者の手腕だ。

 「そんなに簡単に賃上げなどしてくれない」と思う人も多いだろう。だが、働く側にとっても追い風がある。猛烈な「人手不足」だ。もはや優秀な人材を確保しようと思えば、給与を引き上げなければ難しい。すでに社内にいる人材にしても、満足する報酬を維持しなければ、ライバル企業に転職しかねない。「長時間労働で安月給」という企業に未来はない。しかも、今後ますます人手不足は深刻化する。特に若い優秀な人材を確保するのは難しい。

 政府も待遇改善を後押ししている。法律で定める「最低賃金」の引き上げだ。大都市部ではアルバイトの時給が1000円を超えてきた。パートやアルバイトの時給が上昇すれば、相対的に若年層の給与も引き上げざるをえなくなる。

 だが、最大の問題点は、「手当が欲しいから残業する」という働く側の「本音」をどう変えていくかだ。一つの方法は、「残業してもしなくても給与は同じ」にすることだろう。手取りが変わらないのなら、残業はしない。つまり「残業」のメリットをなくせば、誰も残業などしなくなる。

 政府が労働基準法改正で実現したいとしている「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」はその突破口になり得る。労働組合や左派政党は「残業代ゼロ法案」と言って批判するが、対象は「年収1075万円以上の従業員」である。管理職はもともと残業代が払われないので関係ない。

 1075万円以上の年収がある「従業員」は、年金保険料の支払いデータでみると全体の1%未満だ。残業代込みで1075万円以上と考えれば、今の水準より引き上げになる人がほとんどである。さらに管理職でも1075万円以上をもらっていない人は多くいるので、そうした人たちの給与を引き上げる効果もあるだろう。

 つまり、時間に関係なく給与が払われる仕組みが導入されることによって、多くの社員が「どうすれば残業時間を減らせるか」「より短時間で成果を上げられるか」を考えるようになるに違いない。

 そう考えると、残業の上限規制と、高度プロフェッショナル制度の導入という労働基準法改正は、あくまでセットで法案成立させるべきものだろう。