就業者増は見込めず、生産性向上が不可欠に

 「2017年度には、過去の個人消費に停滞感をもたらしてきた(1)年金の特例措置の解消、(2)現役世代の税・保険負担の増加、(3)過去の景気対策の反動、のいずれの要因についても、悪影響が一巡し、個人消費の見通しを明るくする好材料となっている」というのだ。

 そのうえで、考えられるリスクとして「残業代の減少」を挙げている。残業が減っても、その分が他の労働者の仕事に回れば、企業が払う給与総額は大まかに言って変わらない。ところが、残業時間分を新たな労働力で補おうとした場合、240万人のフルタイム労働者が必要になるとしている。「労働力率の上昇の余地も限られており、これ以上の大幅な就業者の増加は望みにくい」ため、残業が減った分、給与総額が減り、経済全体としては消費に回るおカネが減ってしまう可能性が出てくるというのだ。

 もちろん、だからと言って、長時間労働の是正はするな、としているわけではない。「IT(情報技術)投資、研究開発、あるいは企業の合従連衡などを通じた相応の労働生産性の向上が並行して達成されるか否か」が重要だと指摘する。言い換えれば、労働時間が短くなっても、企業の利益を落とさないような仕事のやり方に変えることが重要で、しかも、その分がきちんと労働者の給与に反映されるかどうかが重要だと言っているのだ。

 9月中にも開かれる臨時国会で、政府は「働き方改革」に関連した労働基準法改正案を成立させたい考えだ。その柱の1つが、「罰則付き残業規制」の導入である。今年3月に閣議決定した「働き方改革実行計画」に盛り込まれた規制案では、残業は月45時間、年360時間という原則を維持したうえで、労使合意によって認める残業時間の上限を月平均60時間、繁忙期を含めて年720時間とすることが固まっている。繁忙期の月に例外的に認められる上限も「100時間未満」で決着した。しかも、それを破れば、企業には罰則がかされる。

 8月の内閣改造で「働き方改革実行計画」を取りまとめた加藤勝信・働き方改革担当相が、働き方改革担当を兼務したまま厚生労働相に横滑りしており、原案通りの成立を目指す姿勢が示されている。法案が成立すれば1~2年以内に法律が施行されることになり、確実に残業時間は減る方向へと動くことになるだろう。

 そんな中で、大和総研のレポートが危惧するように、残業時間が減って、給与も減ってしまっては、経済成長の足を大きく引っ張ることになる。では、どうやって生産性を高めていくのか。

 まずは所定労働時間内で従来と同じ成果を上げる工夫がいる。生産性を上げるというと、今までと同じ仕事をより短時間の間に「回転率」をあげてこなす事だと考えがちだ。だが、現実には「回転率」を上げるのはそうたやすい事ではない。そうでなくても「失われた20年」の間に、企業は人数をとことん減らし、スリム化してきた。増えている仕事を今の人数でこなすのは無理だと感じている人も多いだろう。