残業規制が強まると、官庁街やオフィス街の夜の風景も変わるのか。(写真:毎日新聞社/アフロ)

月60時間の残業規制で、所得は8.5兆円減少

 「残業代が無くなったら生活できない」――。

 いくら、長時間労働の是正を政府が声高に叫んでも、日本の会社から残業が無くならない最大の原因は、働く側のそうした「本音」にある。効率的に仕事を終わらせて定時に帰るよりも、毎日一定の残業をした方が「手取り」が増える。逆に、残業を止めれば手取りが減ってしまうのだ。

 長時間労働の撲滅を目指しているはずの労働組合も、労使交渉で「残業代は生活給の一部だ」などと主張したりする。過労死するような不本意な残業はともかく、そこそこの残業ならば、むしろ歓迎なのだ。

 だから、子育てや介護などで、本気で定時に帰らざるを得ないような状況に直面すると、「敵」は会社や経営者ではなく、同僚や労働組合ということになる。何せ、本音では残業をしたいと思っている人が少なくないのだ。

 「残業規制で所得8.5兆円減、生産性向上が不可欠」

 そんな記事が多くのメディアで報じられ、話題を呼んでいる。数値は大和総研が試算したものだ。政府が推進する働き方改革によって、国民の所得が減る可能性があるというのだ。長時間労働を是正すれば、その分残業代が減り、個人消費に逆風になる――。長時間労働は是正すべきだ、という「あるべき論」ではなく、いわば「本音」を数字で示した素晴らしい試算だ。

 計算は単純だ。安倍晋三内閣の「働き方改革」によって1人あたりの残業時間が月60時間に制限されれば、労働者全体で月3億8454万時間の残業が減少、それに時間当たりの残業代を乗じると、年間で8兆5000億円に相当するというものだ。この金額は雇用者報酬の全体の3%にあたる。

 この試算は、大和総研が8月17日に発表した「日本経済予測」の中に盛り込まれている。四半期ごとに公表している景気の先行き見通しで、今回は「経済成長の牽引役は外需から内需へ」というのがタイトルだ。

 政府が発表した2017年4~6月期の実質 GDP(国内総生産)成長率が前期比年率で4.0%増(前期比1.0%増)と予想以上の成長になったことについて、「個人消費、設備投資、 住宅投資、政府消費、公共投資といった主要内需項目が全て成長に寄与した」とする一方で、「前1~3月期に続き、成長の牽引役が内需に交代している点は注目に値する」としている。そのうえで、今後もしばらくはこうした内需主導の経済成長が続くと予測している。