「健康確保措置」と「裁量労働制」が課題に

 これまで反対してきた高度プロフェッショナル制度について、連合が受け入れに転換するのは簡単ではない。7月の合意では、政府側が譲歩する形で、いくつかの修正をする事になっていた。

 連合が求めた修正は、「健康確保措置」の導入。年間104日の休日確保に加えて、退勤から出社までに一定の休息を設ける「勤務間インターバル制」や2週間連続の休暇、臨時の健康診断など複数の選択肢から、それぞれの企業の経営者と労働組合が合意したうえで選ぶようにするとした。

 また、労働基準法改正案に盛り込まれている「裁量労働制の対象拡大」にも条件を付けた。裁量労働制は実労働ではなく、「みなし労働時間」に基づいて賃金を支払う制度で、弁護士や公認会計士などの専門職や、研究職、クリエイティブ職などに適用が認められている。これを法人向けのソリューション型営業と呼ばれる提案営業にまで適用拡大することが改正案に盛り込まれている。連合はこれが、商品販売など一般の営業職で使われることに警戒してきたが、今回の改正案の修正で、一般の営業職は対象外であることを明確にするとした。

 今後、秋の臨時国会に向けて、こうした「合意条件」が水面下で探られる事になるだろう。高度プロフェッショナル制度を巡る連合内の混乱が、人事など体制を巡る確執に端を発しているとすれば、残業時間の上限規制と「バーター」で高度プロフェッショナル制度が導入される可能性は十分にある。だが、逢見氏が「中二階」に就いたことで求心力を失えば、これまでの交渉が全て白紙に戻る可能性もある。

 そうなると、安倍内閣の政治的な判断に焦点は移る。内閣改造で厚生労働相になった加藤勝信・衆議院議員は、働き方改革担当相として3月の実行計画をまとめ上げた本人である。「労働時間の上限規制」という歴史的な改革を何とかして成し遂げようとするだろう。一方で、高度プロフェッショナル制度については前厚労相の置き土産と見ることもできる。

 厚労省の幹部は、「労働基準法改正案はよく見ると、上限規制と高度プロフェッショナル制導入を切り分けることができてしまう。もっと、それぞれの条文を関連させるなど、一体不可分の法案にしておけば良かった」と振り返る。

 加藤厚労相が、労働側が求める「残業時間の上限規制」と、経営者側が求める「高度プロフェッショナル制度」を、一体のものとして成立させることにトコトンこだわるか、労働者への配慮という有権者「ウケ」を優先するのか。衆議院議員の任期満了を来年に控えて、解散総選挙も視野に入ってくる中で、今後、労働基準法改正がどう扱われていくのか。大いに注目される。