上司と部下の関係がより「フラット」になる

 その円環が回り始めることで、プレッシャーがかかり始め、ようやくコーポレートガバナンスが機能していく。ちょうどそんな段階にさしかかっているとみていいだろう。

 そこで、「働き方改革」が大きな意味を持つ。働き方改革によって、働く人と会社、個人と経営者の関係が変わることは明らかだ。働き方改革では、働き方の多様性を認め、よりフラットな関係を会社と働き手が築くことになる。副業や複業を認めたり、働く時間を自分で選ぶなど「多様な働き方」が認められれば、一つの会社に一生涯務める「終身雇用・年功序列」は大きく崩れていく。より自立した「個人」が増えていくことになるのだ。

 終身雇用を前提にした人間関係は硬直的だ、一生付き合う上司にモノを言えるはずはない。伝統的な日本企業では、たいがい上下関係はそう簡単には逆転しない。上司は一生上司であるケースが少なくない。そんな上司に逆らうことなどできないのは当然だ。

 日本型の雇用形態が崩れれば、上司と部下の関係がより「フラット」になっていく。企業がある人の「能力」を買って、あるポストに採用した場合、その専門能力が欠けると判断すれば、解雇する。逆に働く側も自分の期待した仕事ができ、スキルアップにつながるのでなければ、早々にその会社を辞めて、転職する。そうなれば、上司に絶対服従ということはありえない。

 旧来型の日本の会社では、社長が「右」と言えば、実際は左だったとしても「右」という。絶対的な人間関係の中で社長に逆らうことなど考えられないからだ。それが「働き方改革」によって、より自立した自由な働き方をするようになれば、社長にモノを言うこともできる。むしろ専門家として社長にモノ申すことを期待されている。

 つまり、社員が社長の応援団から、社長にプレッシャーをかける「ステークホルダー(利害関係者)」に変わっていくわけだ。

 さらに人手不足が追い風になっている。十分な給料を払わなければ優秀な人材が採用できなくなっている。そうなるとますます社員の「自立」は進み、社員のステークホルダーとしての発言力は大きくなっていく。

 そうなれば、企業は、最大のステークホルダーに報いるために給与を増やすという行動を取り始めるに違いない。分配を増やそうと思えば、全体のパイを大きくする。つまり収益力を上げるほかない。

 働き方改革が企業の「稼ぐ力」を改善すれば、当然、生産性は上がっていくことになるわけだ。