ところが、現場で実際に診療する医師は足りない。医師免許を持っている人が増えても、実際に医者として働く人が増えない状態なのです。

 これは医師免許を持っている女性が、医師として働かない例が多くみられるからです。優秀な女性が資格だけ取る。お茶やお花の免状と同じように才能の証明だけになってしまっては困るのです。医学部の定員を増やしても、女性が多く合格して、結局、医者として働かないということになってはまったく意味がないのです。女性に医師としての使命を果たす意識をきちんと持ってもらわなければなりません。

医師の仕事が激務過ぎて、生活との両立が難しい、あるいは女性としてそうした働き方を許容できないということがあるかもしれません。

帯野:そうですね。女性が働きやすい社会や企業、組織を作ることで、女性だけでなく男性も、より多様な人生を送れるようになります。片道2時間近くもかけて通勤するような人生は嫌だ、という人が増えれば、世の中の一般的な働き方も変わっていきます。

 よく女性と話していて言われることがあります。自分たちは望んでいないのに、世の中の流れで、女性だからといって課長にしたりするのはなぜ、というわけです。そんな時、私は、「あなたがそこにいることが大事なんです。それによって組織が多様になることこそが重要なの」と説明するようにしています。

多様な選択肢がない社会はもろい

多様性が加わることが大事だというわけですね。

帯野:選択肢がないような社会は変化に対応できず、もろいです。そうした社会は将来、絶対にダメになります。

 日本の男性は可哀相ですね。良い大学を卒業して良い会社に入らなければダメだと、まだまだ信じているようです。今の社会は男が作って来た男社会ですから、大学を出た男性は、その中に入らないといけないと思ってしまうのでしょう。その点、女性は自由です。男社会に合わせて、その中にいなければならない理由が分からない。

 私は和歌山大学の副学長もしていましたが、大学は多様な人材を育成する、と言いながら、運営する幹部は男ばかりです。当時、国立大学の女性理事はたしか11人いましたが、6人が女子大で、4人が文科省出身者で、民間出身の女性は私ひとりでした。

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