会社ぐるみの贈収賄は、懲罰的な罰金の対象に

 かつて、総会屋と呼ばれた特殊株主に、株主総会を平穏に終わらせるために金品を渡す企業が少なからずあった。バレて逮捕・起訴された総務担当役員が、ほとぼりがさめると、関係会社の顧問などとして面倒をみてもらうケースがあった。「会社のため」に働いた犯罪だから、個人を裁くのは気の毒だというムードがあった。逆に言えば、会社が最後まで面倒をみてくれる、という確信があるからこそ、「会社のため」に罪を犯すことも辞さない社員が存在してきたと言える。

 それだけに、今回の司法取引は、衝撃的だったと言えるだろう。

 MHPSが役員らを「売って」まで、贈賄の罪を自白した背景には、贈収賄を巡る国際的な罰則強化の流れがある。会社ぐるみで贈賄を行ったとなると、国際的に痛烈なバッシングを受ける可能性があるのだ。

 日本企業が海外での贈収賄に神経を尖らせ始めたのは、2011年に英国で贈収賄防止法が施行されたのが一つのきっかけだった。もともとは米国で1972年に起きたウォーターゲート事件の調査をきっかけに、多数の米国企業が外国公務員に贈賄をしていたことが判明。1977年に、海外腐敗行為防止法(Foreign Corrupt Practices Act、FCPA)が制定された。

 1997年には国際商取引での外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約が発効し、日本を含む41カ国が批准。日本は、1998年に不正競争防止法に、外国公務員等に対する不正の利益の供与等の罪(18条)を新設した。

 日本も国際的な腐敗防止の流れに沿った対応を進めてきたわけだが、日本企業が本気で危機感を持ったのは、米国や英国が法律の「域外適用」に乗り出してきたためだ。米国内に支店や事業拠点があれば、その企業がアフリカなどの第三国で贈賄を働いても、米国法で摘発することができる。もちろん、日本企業が賄賂で仕事を取っていけば米国企業が損害を被るという理屈がある。

 アングロサクソンはそうした「アンフェア」な行為に対して強く反発する国民性をもっている。摘発されると懲罰的な罰金として巨額の制裁金が科される、そんな例が相次いだのだ。

 贈収賄と同じく「アンフェア」な犯罪行為として英米が激しく批判するのが、カルテルや談合といった独占禁止法違反だ。国際的なカルテル行為があったとして日本企業が摘発され、千億円規模の制裁金が科されるケースも頻発している。

 企業が罰金を支払うだけでは済まず、実際にカルテルを働いた社員なども摘発されている。夏休みに日本からハワイに行き、米国に入国した途端に逮捕され、裁判にかけられるといったドラマ張りのことが起きている。米国の刑務所には有罪になった日本人ビジネスマンが数十人収監されているとされる。

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