また、教育のセーフティーネットも重要です。給与を受け取りながら学べて、その後、社員として採用されるような学校をもっと作るべきではないでしょうか。かつての国鉄の「中央鉄道学園」「鉄道大学校」のように専門技術者として教育を受け、そのまま国鉄職員に採用されるイメージです。経済的に恵まれない若者や高校などでドロップアウトした若者たちにスキルを学んで職に就く機会を与える必要があります。

20年後の労働政策を考えた場合、他に何かやるべき事はありますか。

八代:ホワイトカラーのスキルアップのためのセイフティネットと言えるかもしれませんが、教育休業制度ですね。個人が海外留学する際など、企業は雇用保障だけして休職を認める。その間、最大2年などと区切ったうえで、雇用保険から準失業手当のような生活費を支給する、育児休業と同じ枠組みでできます。

 企業は留学費用などを一切払う必要はありませんが、MBAなど資格を取って帰国したら必ず昇格昇給させる。会社の経費で留学し、資格を得ても帰国後に昇格できないので、転職するといった無駄な事もなくなります。

高齢者には社会保障の現実を理解してもらう

ご著書の『シルバー民主主義──高齢者優遇をどう克服するか 』(中公新書)が話題になっています。

八代:高齢者の投票率が高いからと言って、その投票権を制限すべきという主張は非現実的です。高齢者に日本の悲惨な社会保障の現状を理解してもらうしかないのです。方法は2つ。ひとつは理詰めで説得すること。政府は年金制度が持続可能だと言っているが、実際にはそれは粉飾で、年金はすでに不良債権ということをきちんと説明する。そのうえで、年金の一部切り下げを受け入れてもらうわけです。

 もうひとつは高齢者の「利他主義」に訴えること。あなたのお孫さんを犠牲にしてまで多くの年金を受け取りたいですかと問えば、日本の多くの高齢者はとんでもないと言います。政治家はそうした点をもっときちんと高齢有権者に訴えるべきです。

 高齢者にばら撒いて目先の選挙を有利に戦おうというのは馬鹿げたことです。かつて小泉純一郎首相は「痛みなくして改革なし、改革なくして成長なし」と言って、国民に構造改革の重要性を訴えて大きな支持を得ました。政治家がリスクを負って、高齢者に痛みを受け入れてもらうよう説得すべきでしょう。

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