旅館やホテルで人材の争奪戦

 全国の主要都市でホテルを建設する動きが広がっているのに加え、既存の旅館やレストランなどでも改装などが行われている。ただし、いくらハコモノを整備しても、接客するスタッフが足りなければお客を受け入れることができない。2020年をめがけて、人材の確保が始まっているのかもしれない。

 もう一つ、こうした産業の雇用が増えている理由は待遇の改善だろう。宿泊・飲食・小売りといったサービス産業は生産性が低い業種の代表格だった。デフレ経済の中で、価格競争が激しさを増し、儲からない産業になっていた。このため従業員の給与も他の産業に比べて低く抑えられていた。

 それが、ここへきて給与が上昇傾向にある。ひとつは国の政策もあって最低賃金が急ピッチで上昇していること。安さを売り物にする外食チェーンでも都心部では時給1000円以上が当たり前になった。待遇の改善によって、パートやアルバイトが集まるようになったということだろう。

 こうした産業で値上げが浸透してきたことも理由だ。ホテルや旅館の価格は大幅に上昇している。外国人観光客の急増で、稼働率が上がり、宿泊料も引き上げられれば、当然、大きな利益が生まれる。これを従業員に還元することが可能になってきたのだ。逆に言えば、キチンとした待遇でなければ、人材が他の旅館やホテルに奪われる、という事態になっている。

 日本の旅館やホテルなどの価格は世界的に見て極めて安い。欧米諸国はもとより、シンガポールや香港などアジア諸国のルームチャージよりも安いケースが少なくない。しかも旅館の場合、1泊2食付きが普通で、外国人観光客からすれば、信じられない安さ、ということになる。20年以上にわたって日本でデフレが続いた結果、国際価格から大きく乖離してしまったのだ。逆に言えば、国際価格に戻すチャンスで、「低採算業界」という汚名を返上する絶好の機会に直面していると言える。

 話を戻そう。この4カ月で増えているのは「雇用者」ばかりではない。それ以上に「就業者」が増えているのだ。就業者は129万人増えたが、そのうち雇用者は54万人である。具体的な理由はまだ分からないが、「自営業」や「請負」といった会社に雇われない働き方が大きく増えているとみられる。雇用者と同様に「宿泊・飲食サービス業」や「卸売業・小売業」などの就業者が大きく増えている。

 外国人観光客などを目当てに規模の小さい物販業など小売業を始める人が増えているのかもしれない。あるいは、「働き方改革」の一環で、多様な働き方を求める人が増えたり、企業もそうした働き方を容認するようになって、「雇用」ではない働き方の契約形態が広がり始めている可能性もある。

 消費産業を中心とする、この4カ月の就業人口の急増が続くのかどうか。この傾向が長続きするようならば、日本の消費が本格的に底入れしてくるシグナルになる可能性もありそうだ。