「ノーモアとりあえずの英語」とおっしゃいましたが、小学校からの英語義務化など、早期教育が日本でも重視されています。

岡村:先日、韓国サムソンの幹部と話しをしていたら、同社のエリート社員の大半は自分の子どもに小学校1年生から月額5万円をかけて英語教育をしていると言っていました。韓国人に英語を話す人が増えたのはそうした努力の結果です。しかし一方で、その分犠牲になるものはあるわけです。しっかりした日本語が話せて日本人としてのアイデンティティをきちんと持てるというのが前提での、英語教育でしょうね。

 ただ、社会人になってからは話が別です。英語力を上げるよりも仕事力を上げる方がはるかに重要です。外資で社長をしていた時、部下の英語の点数なんて見たことはありませんでした。仕事で成果が上がっていれば英語はしゃべっているんだろう、という事になります。仮に英語が得意でなくても、英語が上手な部下を駆使して仕事の成果を出すこともできます。かつては、海外から日本に進出する企業の多くは、英語力を見て日本現法の社長を探していましたが、最近は英語力よりも仕事力を見て選んでいますね。

 人工知能(AI)の進化スピードは速いので、数年すれば、何のストレスも感じない自動通訳が可能になるでしょう。そうなると英語力はますますグローバル人材の武器ではなくなります。

「働く目的」をきっちり見定めて、公言するのが大事

ビジネス予備校で教える際に、どんな事を強調されていますか。

岡村:自分自身の「働く目的」をきっちり見定めて、公言するのが大事だと言っています。私は○○のために働いている、と公言することで、自分の逃げ道をふさぐわけです。「どう働くか」を突き詰めると「どう生きるのか」になります。それを考え、公言すれば緊張感が生まれます。

 どう生きるのか、答えはひとつではありません。いろいろな生き方があります。つまりいろいろな働き方があっていいわけです。自分自身の価値観をきっちり持っていなければ、他の人たちの多様な価値観を認めることなどできません。今の教育は「ハウツー」ばかりが多すぎるのです。グローバル社会で活躍できるのは、豊かな個性をもった多様性あふれる人たちです。