そして、今回のキッズウイークである。そもそも夏の暑さが猛烈さを極めるようになっているのに、夏休みを短縮することが効率的なのかどうか。また、夏休み期間が短くなることで、両親が夏休みを取る候補日が減り、かえってその時期の交通機関などの混雑が増すという懸念もある。「役人が考えた机上の空論」という批判もある。
政府が「休み方改革」や勤務時間の短縮を叫ぶのは、日本の長時間労働がなかなか解消されないという現実がある。また、有給休暇の取得率は先進国の中でも最低レベルだ。フランスなどは年間30日ある有給休暇を100%消化しているのに対し、日本は年間20日の有給休暇の消化率は50%程度とされる。有給があっても使えないので、国が休む日を指定しましょう、というわけだ。
こうした「国が決めた日に一斉に休む」という日本の傾向は、祝日数にも表れている。
日本の祝日数は現在、年間16日。このところ、「海の日」や「山の日」など新しい休日が増えてきた。天皇陛下の退位・代替わりが固まっており、おそらく新天皇の2月の誕生日が祝日に加わることになる。そうなると年間17日だ。しかも日曜日と重なると振り替え休日になる。世界ではインドやコロンビアが18日で最多とされるが、日本が世界一祝日の多い国になる日も近い。
では、先進国はどうかとみると、英国は8日、ドイツは9日、米国は10日、カナダ、フランス、イタリアは11日といった具合である。G7(主要7カ国)の中では日本が断トツに祝日が多いのである。
これをみると、祝日増などを通じて国が「一斉に休む」日を決めていることが、逆に、有給休暇の取得を妨げて長時間労働に拍車をかけているのではないか、と思えてくる。
有休消化率の高いフランスなど欧州諸国の場合、平日に30日の有給休暇を使うのは当然で、土日と合わせて夏に4週間、年末に2週間の長期休暇を取る人が多い。長期のバカンスを取らないとリフレッシュしない、という声をよく聞く。
筆者は新聞社の支局長としてスイスとドイツに駐在した経験を持つが、8月と12月はほとんど仕事にならないほど、多くの会社の社員が休暇を取っていた。ただし、9月から11月などその他の時期はよく働く。ドイツでは夏になると早朝に出社して午後4時頃には退社する人たちの姿を良く目にした。国に言われなくても「ゆう活」をしているのだ。夏の間、日が長いドイツでは、4時に退社すれば、ゴルフを余裕で1ラウンド回ることができるという。
長時間働いても、なぜ1人当たりのGDPは伸びない?
まさに、ワークライフ・バランスを取った働き方と言えるが、そうした働き方が可能なのは、「ジョブ・ディスクリプション」が明確だからだろう。自分の仕事の範囲が明確になっているので、それを終わらせれば帰ることができる。隣の人の仕事に手出しをすることはない。これは「手伝わない」というネガティブな意味よりも、「相手の領域には踏み込まない」という相手を尊重した態度といえる。
では、どちらの生産性が高いのだろうか。
しばしばドイツ人に言われるのは、日本人はドイツ人よりもはるかに長時間働いているのに、なぜドイツよりも1人当たりGDP(国内総生産)が少ないのか――。日本の1人当たりGDP(米ドル建て)は3万4500ドルだが、ドイツは4万1000ドルを超える。「バカンス大国」のイメージがあるフランスは3万6400ドルと、日本を上回っている(いずれも世界銀行、2015年)。
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