「ジョブ型採用」への転換が不可欠

 非正規社員がこれまで大きく増えてきた背景には、そうした正社員型の雇用ではなく、より自由に働きたいという女性や高齢者のニーズがあった。正社員になりたいが、なれないので非正規雇用に甘んじているという人もいないわけではないが、少数である。つまり、日本型の「正社員」システムに違和感を持つ人たちが増えてきているわけだ。

 「実行計画」には随所に「生産性向上」という言葉が出て来る。だが、働き方改革によって、どうやって生産性を向上させるのか、具体的な記述は乏しい。実際は、生産性を向上させる働き方に変えようとした場合、これまでの日本型正社員システムの見直しが不可欠になるのは明らかだ。「白紙」の新卒者を雇って一から育てるよりも、一定の知識・技能を持った「即戦力」を雇う方が生産性が上がるはずだ。

 だが、大きな問題がある。新卒者を一から育てる仕組みを取り続けてきた大企業ほど、仕事のやり方が「その会社流」なのだ。たとえば、全世界共通のように思われる経理処理なども、会社によってやり方が違う。隣の会社の経理のプロをスカウトしても、仕事ができないのだ。つまり仕事の「標準化」ができていないのである。

 そうした仕事の標準化が進めば、日本企業の生産性は大きく向上するに違いない。事務処理のアウトソーシングなどが容易になるし、人材教育にかける時間が少なくて済む。

 そのためには、社員を丸ごと抱え込む「正社員」型の採用をやめ、欧米のように仕事のポストで採用する「ジョブ型」に変えていくことが不可欠だ。ジョブ型採用が主流になれば、若者たちも自分の専門性を磨くことに力を注ぐようになるだろう。一方で、専門能力に見合った給料を支払わない会社にはさっさと見切りを付け、隣の会社に転職していくのが当たり前になる。企業からしても、優秀な人材を集めようと思えば、きちんと給料を払い、職場環境などを改善していくことが不可欠になる。

 その副作用として考えなければならないのは、若年層の失業率が相対的に上昇する可能性があることだ。まったく「白紙」の新卒者を採用するより即戦力が求められるならば、大学を出ても就職できない人が増えるかもしれない。もっとも日本の場合、少子化の影響で、今後もしばらく新卒者は減り続けるので、その副作用は吸収できる可能性もある。

 「実行計画」の中心は、同一労働同一賃金や長時間労働の是正といった「待遇改善」だ。テレワークや副業の推進なども盛り込まれているが、あくまで従来の「正社員」型の雇用形態が前提になっている。企業収益が大きく改善する中で、給与の引き上げで労働分配率を上げるなど待遇改善を進めることは重要だ。だが、「働き方」と「生産性向上」を考える場合、日本人の働き方を規定してきた「正社員」の見直しは不可欠だろう。

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