「組合は『労使合意』を押しつけてくる」

 「組合は敵ですね。会社と残業時間を合意したと言って、社員に押し付けてくるわけですから」。そう労働組合がある大企業の若手社員は言う。組合があるからといって、1人ひとりのライフスタイルにあった「働き方」を実現できているわけではないのだ。

 では、「100時間未満」を法律で定めることは無意味か、といえばそうではない。「100時間未満」という時間よりも、法律で上限を決めるということが大きいのではないか。いったん上限が法律に入れば、その法律を改正して上限時間を徐々に短くしていくという流れになる可能性は十分にある。長時間労働を是正する第一歩になり得るだろう。

「100時間」では、死ぬ寸前まで働け、と言っているに等しい

 だが、いかんせん「100時間未満」という上限は緩すぎる。100時間の残業をして脳溢血で死亡すれば、ほぼ間違いなく労災認定がされる。死ぬ寸前まで働け、と言っているに等しい。とくに危惧されるのは、慢性的な人不足に陥っている飲食店や小売店などの中小零細企業で、「100時間未満」という数字がひとり歩きしかねないことだ。

 厚生労働省が昨年6月に公表した「過労死等の労災補償状況」によると、2015年度の「脳・心臓疾患」による労災申請件数は795件と前年度に比べて32件増えた。請求のうち死亡した例は283件におよぶ。いわゆる「過労死」である。過労死した人の数も2014年度の245件から増えている。

「過労死」のケースで目立つ「自動車運転」と「建設」

 9回目の働き方改革実現会議では、安倍首相が「残る重要な課題」として、2つの職種を挙げた。「自動車の運転業務」と「建設事業」である。長距離トラックの運転手や、深夜にわたって工事に携わる建設作業者は長時間労働を強いられるケースが多い。とくに人手不足が深刻化している現在、さらに長時間の過重労働に追い込まれている。実際、過労死認定されたケースの中で目立つのが「自動車運転」と「建設」なのだ。安倍首相は「長年の慣行を破り、猶予期間を設けた上で、かつ、実態に即した形で時間外労働規制を適用する方向としたい」としており、長時間労働にメスが入ることになりそうだ。

 もっとも、職種によっては単純に労働時間の上限を設けるだけでは、長時間労働の解消につながらないケースも想定される。仕事の仕方自体を変えない限り、労働時間を短くすることは難しい。現在と同じ成果をどうやったら短い時間で上げることができるのか。経営者と従業員だけでなく、顧客なども一体となって、仕事の仕方を抜本的に変える必要がありそうだ。そういう意味ではこの3月にまとまる「行動計画」は、あくまでも第一歩に過ぎないだろう。

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