もともと「例外」を除いて、残業は月45時間までのはず

 これを読んで、瞬時にルールを理解できる人は少ないだろう。もともと労働基準法では残業は月45時間までという原則が明記されている。ところが、話をややこしくしているのが「例外」を認めている点だ。労働基準法の36条にはこう書いてある。

 「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間又は前条の休日に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる」

労使で合意さえすればOKの「36協定」

 何ということはない、労使で合意さえすれば、良いとしているのだ。これが「36(さぶろく)協定」と呼ばれるものだ。日本での労働時間は法律で定められている「建前」と労使合意による「本音」の二本立てでこれまでやってきたわけである。その建前と本音のかい離が激しくなっているから、職場での過重な労働が当たり前になっているわけだ。

 当初、働き方改革実現会議では、この36協定を廃止すべきだ、という声が出た。労使で合意すれば例外を設けられるようにするのではなく、法律で上限を決めればよいではないか、というわけだ。

「36協定」廃止の話は消え、特例の上限を決める方向へ

 ところが会議が進む中で、「36協定廃止」の話はどこかへ消え、「本音」である特例の上限を法律で定めるという話になった。要は、労使双方にとって「36協定」は都合が良い制度なのである。ここで言う労使とは連合と経団連だ。

 経団連にとって、労働組合と合意すれば「例外」が設けられる36協定が便利なのは容易に理解できる。御用組合が多い中で、経営側の思いどおりに残業時間を設定できるからだ。では、連合にとっても都合がよいとはどういう事か。つまり、「労使合意」を条件とすることで労働組合の存在意義を確保していることになるからだ。つまり、法律よりも労使合意が超越するという現状を変えたくなかったわけである。

 だが、この労使合意というのも実は「建前」だとみることができる。労働組合の組織率は今や17.3%。大企業を除くほとんどの会社に労働組合はない。法律では組合の代わりに「労働者の過半数を代表する者との協定」を条件にしているが、本当に彼らが労働者の過半数の意見なのかどうかも怪しい。