労使交渉、給料未払い、値上げの報道で、株価は乱高下

 そんな中2月下旬に、宅急便の総量抑制について労使交渉しているという報道が流れると、株価は急騰した。採算が低いとみられるアマゾンの契約を見直すのではないか、という観測が広がったためだ。2200円台だった株価は一気に2600円に迫るところまで急伸した。また、宅急便の時間指定を正午から午後2時まで取りやめる検討を始めたという報道もなされた。

 ところが3月上旬の報道で、今度は株価が急落する。同社がトラック運転手などのサービス残業の実態を調査し、給料の未払い分を支給する方針であることが分かったと報じられたのだ。未払い給与分の支払いが膨らめば業績への影響が出るとの懸念が広がったのだ。今度は株価は一気に2300円台まで下落した。

 次に日経新聞が報じたのは宅急便の値上げである。ヤマトが9月末までに宅配便の基本運賃を引き上げる方針を固めたと報じたのだ。全面値上げは消費増税時を除くと27年ぶりという。また、アマゾンジャパンなど大口顧客と交渉に入ったという。現場のドライバーの負担になっている再配達についても荷主と共同で削減に取り組むと報じられた。

意図をもって流される情報

 株式市場からすれば一喜一憂するニュースが次々に流れたわけだ。一部にはメディアをコントロールして料金値上げを勝ち取ったという説もあるが、現実には、荷物の急増で現場がパンク寸前の中であたふたしている。労使交渉が行われているタイミングで情報が意図的に流されている面も強い。

 需要が急増する中で、経営の選択肢はいくつかある。サービスを横軸、料金を縦軸とすれば、料金を上げてサービスを維持するか、料金を据え置いてサービスを削るか。料金も上げて、サービスも削るという選択肢もある。いずれも顧客との力関係で決まる。さすがにこのタイミングでは料金を下げて、サービスを上げるという選択肢は取れない。

 ニュースはこうした選択肢が未整理のまま流れている。果たしてヤマトはどんな選択肢を取るのか。山内社長の言う価値観・理念を放棄することはないだろうから、顧客の理解を得られることが第一になる。庶民からすれば、多少のサービス劣化は仕方がないが、料金上げは困るとなるのか、値段が上がってもサービス劣化は困るとなるのか。その見極めが大事だろう。

自動運転やロッカーの設置などで、人手を省いていく

 短期的な対応はともかく、中長期的にヤマトはどんな戦略を取ろうとしているのか。懇談会での私の質問に山内社長はこう答えている。概略は以下の通りだ。

磯山:「宅配便業界は猛烈な人手不足だと伺っています。将来にわたって人材は採用出来るとお考えか、例えばロボットとか、ドローンで物を運ぶことに本格的に取り組もうとしているのか」

山内社長(ヤマトHD):「業務の中で後方の仕分け業務は、ほとんど機械化していけるようにしたい。だからここはどんどん人がいなくなる。集荷・配達の部分は、今の業務をもう少しセグメントしていく形になるかと思います。会話をしたり相談したいお客様は、セールスドライバーが、人間が配達する。一方で、荷物を人から受け取るのが煩わしいという方もいる。ロッカーを設置したり、コンビニエンスストアなど色々な所で受け取れるように選択の幅を広げていきます。新しいテクノロジーのイメージでは、ロッカーと自動運転とセットにして、ロッカーに荷物を入れておくと、それが各家庭までいくような人手を介さないものをいかに取り入れていくかです」

ヤマトの今後の変身は、先端技術活用の典型例になる

 山内社長は、あくまで人間が配送するものについて「プレミアム的なサービス」という言葉を使った。すでにヤマトはセールスドライバーが独居老人宅の見守りを行うサービスなどを試行している。つまり、エリアをカバーするネットワークを生かして、より付加価値の高いサービスに出て行こうと考えているわけだ。一方で、モノを運ぶことだけを求める顧客にはテクノロジーの利用で効率化したサービスにシフト、コストを引き下げて行こうという考えだ。

 働き方でいえば、本当に人がやらなければならない部分は人を使い、機械に置き換えられる部分は積極的に置き換えていく、ということだろう。つまり、より顧客と密接な関係を保つためのサービス要員へとドライバーが変わっていくということなのだ。

 ヤマトの喘ぎと今後の変身は、日本全体が直面する人手不足とAI(人工知能)などの先端技術の活用の典型例になっていくだろう。