定型のサービスではなく、臨機応変であることが重要

 社員が共有する「価値観・理念」を山内社長は、「お客様に喜んでもらうということを常に追求するんだという思いを常に持つ」ことだとした。そして「ここは会社として揺るがない1つの特徴」と胸を張った。そのうえで、労働時間など一定のルールの中でセールスドライバー自身が創意工夫して動けるようにしている、という。4000カ所も集配所があって同時に大勢の社員が働く中で、「マニュアル管理だとか、統一管理というのは無理」だというのだ。

 定型のサービスではなく、臨機応変。クロネコヤマトの宅急便が他の宅配便に比べて評判が良いのは、こうしたマニュアルではないドライバーの自主性を尊重しているからだろう。さらに、利用者の声はドライバーにフィードバックされ、表彰されるなど評価される仕組みも作っている。評価は必ずしも給与に全面的に反映されるわけではないという。金銭よりも「顧客の喜び」のフィードバックや周囲から褒められる「表彰」でインセンティブを高めているという。いわゆる歩合制とは距離を置く。

「サービス向上で、働き方は悪化するのでは」という疑問

 顧客満足第一でサービスを常に磨いていく──そうした仕組みはある意味、日本の伝統芸とも言えるだろう。だが、さっそく懇談会のメンバーの中から疑問の声が挙がった。

 働くお母さんの立場から参加していた元日本経済新聞記者の中野円佳さんだ。

 「どんどんサービスを良くすることで働き方が悪化するということはないのでしょうか。それを感謝してもらえるからという喜びで報いるという形にしてしまうと、やりがいの搾取になってしまうのではないか」

 まさに、今、ヤマトが直面している問題である。荷物が増えすぎてドライバーが限界にきている、という。

「良いサービスの提供」と「社会的なルールの遵守」

 これに対して山内社長はこう答えた。

 「御指摘のとおりです。良いサービスを提供していこうということで、無制限に、例えば配達の時間を夜1時間延ばしてしまうとか、そういうことをしてしまうと本人の負担になりますし、それを取り囲む周りの一緒に働いているメンバーの負担になってしまうことが当然起きます。従って、これは一定のルールであるとか、一定の労働時間の中であるとか、そういった範囲の中での工夫、ということになります」

 あくまで社会的なルールの枠内での話だとしたのだ。ルールを無視すれば、働き手を酷使するだけの「ブラック企業」になってしまう。

 ここ1カ月ほどヤマトの経営陣の舵取りに注目が集まっている。全国的な人手不足に加え、ネット通販の広がりによる宅配の急増で、宅配便の現場が悲鳴を上げているという報道が年明けから目立っていた。やり玉に挙がったのがネット通販大手のアマゾンジャパン(東京都目黒区)。翌日配送ならぬ当日配送の導入などで、利用が激増した。

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