デレスケさんが住むフライブルクの先進モデル地区から路面電車を乗り継ぎ郊外へ向かうと、緑に囲まれたエリアに立つマンション群が見えてくる。これらは自治体が管理する公営住宅だ。築50年に近づいたため、最近、このうちの2棟で大規模リノベーション工事が行われた。

住民予定者を事前にマッチング

 工事では、ベランダの開口部を大きく外に張り出す構造に変更。建物全体の延べ床面積を1000平方メートル分大きくした上で、1フロアごとの部屋数を6から9へ増やし、入居できる総世帯数を底上げした。その結果、自治体へ入る家賃収入が増え、大規模リノベーションにかかったコストを短期間で回収できるようになった。ドイツではこのような公営住宅が充実している。建設主体は日本のように自治体に限定されているのでなく、民間団体も許可さえ受ければ、自由に建設することができるのが特徴的だ。

大規模リノベーション後の公営住宅(写真左)と、まだリノベーションが行われていない公営住宅(写真右)

 この公営住宅では、大規模リフォームの完成後にあるイベントが開かれた。フロアごとに入居を希望する住民予定者らが事前に顔合わせをし、自己紹介し合う。そこでちょっと性格が合いそうにないなと感じたら入居希望を取り下げることができる。希望するフロアとは別のフロアの住民予定者と合いそうだと思えば、入居予定の部屋を変更することも可能だ。

 この公営住宅に住む高齢女性は「事前に気の合う仲間を見つけられたので安心して住むことができた」と笑顔で話す。公営住宅であっても入念に、時間をかけて事前に入居予定者同士のマッチングを行う。家を資産と考えるドイツならではの試みだろう。

 今、ドイツは難民・移民受け入れを巡って揺れている。ヘンドリクス環境・建設相は、年10億ユーロの住宅支出を2020年まで2倍の年20億ユーロに拡大する必要があると発言。年15万~25万件の新築着工件数を年40万戸規模に増やす考えだが、新築住宅の着工規制やリーマンショックを機に建築会社の数は減少傾向が続いており、すぐには対応できない状況にある。

 政府が難しいかじ取りを迫られているのは間違いない。ただ一時的な措置として政策変更を余儀なくされたとしても、家の資産化という政策の大綱は揺るぎがない。