「AI営業マン」でオトリ撲滅へ

 「消費者が自ら情報を探せるようにして業者との情報格差を縮め、不動産業界全体の健全化に貢献したい」。伊藤嘉盛社長は、両サービスを投入した狙いをこう語る。「業界と対立する意図はない」と伊藤社長は強調するものの、業界で暗黙のうちにまかり通っていた悪弊に切り込むサービスだけに不動産会社からの反発もあったという。

イタンジの伊藤社長。「人間とAIの分業体制で不動産会社の仕事をサポートする」

 いま、同社が力を注いでいるのがAI(人工知能)の活用だ。この2月に提供を始めたのが、AIを使って不動産会社の賃貸物件営業を支援するサービスだ。

 「○○マンションの○○号室、まだ空いてますか」「はい、空いています。入居日はいつごろをご希望ですか」。消費者はスマートフォンを使い、チャットツール「LINE」の要領で問い合わせのメッセージを送ると、不動産会社から答えが返ってくる。

 ただし、答えているのは人間ではなくAIだ。人間と違って年中無休で働き続け、回答までに時間もかからない。

 「AI営業マン」の働きで、賃貸仲介の悪弊である「おとり行為」にブレーキをかけられるのではないかと、同社は期待する。不動産会社がおとり行為に手を染める大きな動機が、顧客を一人でも多く呼び込むこと。ただ、「不動産営業の現場は人手不足で満足に顧客対応ができていない。当社の調べでは、問い合わせをしてきた顧客の6割が来店に至らず離脱している」(伊藤社長)。

 AIで現場を省力化できれば、顧客獲得コストの抑制につながる。結果として、おとり行為に手を染めるインセンティブを減らせるというわけだ。

 良い意味で空気を読まず、既存秩序の破壊を恐れない。それが長い目で見れば業界を健全化し、発展につながる。青臭いと言われようと、彼らは止まらない。ITの力で不動産ビジネスを変える、不動産テック企業の台頭が業界を揺るがしつつある。