新築着工規制の強制力に違い

 ここまではドイツとの類似点を挙げたが、相違点も見えてきた。ドイツでは住宅地域以外では、勝手に住宅を建てることができない厳しい規制がある。箕面市も今回の計画で居住誘導区域以外において、「3戸以上、または開発規模が1000平方メートル以上の1、2戸」を建設する場合は、自治体へ届け出が必要になった。しかし禁止できる許可制でなく届け出制であることが異なる。届け出の内容によっては箕面市が中止も勧告できるとしているが、あくまで勧告であることからドイツほどの強い拘束力はない。実効性の担保がドイツとは大きく異なるのだ。

阪急箕面駅近くの箕面8丁目周辺地域は非居住誘導区域に指定されたため、住戸開発は制限されることになった

 そして最も大きな相違点が居住誘導区域における住居建設の考え方だ。ドイツは住宅地域においても新築の着工件数を厳しく制限している。そのおかげで中古住宅の流通が活発になっている。さらに中古の改修に多額の補助金を付ける制度があるため、中古を買って住みやすいようにリフォームやリノベーションすることが当然になっている。日本のように20年で中古の建物の価値がゼロになるようにはなっておらず、積極的にメンテナンスする文化が根付き、売る側も買う側もメンテナンス内容を資産価値として認めるサイクルができている。

 箕面市は、居住誘導区域において新築着工件数を管理することには踏み込んでいない。また、既存の中古住宅をどう維持していくかという視点も見られない。立地適正化計画を策定した自治体が受けられる優遇税制は都市再生特別措置法に定められている。それを見ても、商業施設向けの税優遇はあるが、ドイツのような中古住宅に対する優遇税制はない。

 ドイツは住宅に対する省エネ設備の効率を点数化し、売却の際の広告に表示する義務があるが、中古住宅に関する記述がない箕面市の計画にはもちろん言及がない。

 こうしてみると、国が旗を振り、現在220の自治体が策定を進めている立地適正化計画は、コンパクトシティ化による行政効率の向上だけに注力しており、現在住んでいる市民の住宅資産の価値を維持・向上するという視点が欠けている。この視点が欠けたまま進めば、市民が住宅資産を持たないために、都市機能誘導区域や居住誘導区域へ自治体の思惑通りに誘導されず、お題目であるコンパクトシティすら実現しない恐れがある。ドイツをお手本とするならば中古優遇の税制が有効だが、優遇税制は自治体で決められるものではない。素早い政府の軌道修正が求められるのだろう。