大学と企業の関係で言えば、それを少しずつ積み上げてつながりを「面」にしていくしかないと思いますね。大学も企業も黙っていたままでは分からないから、接点を作るための仕掛けや環境を整えていくことは重要です。ここについては、大学側がしっかりサポートをしていくべきところです。

東京理科大が進める環境整備では、米マサチューセッツ工科大学と連携した起業家育成システムのプログラム「MIT-REAP」や、2016年12月にオープンした「起業推進センター(TEIC)」が注目されます。どんな狙いですか。

 まず、前提として東京理科大学の成り立ちと理念ということについてお話ししておきます。前身の「東京物理学講習所」として1881年に創立されて以来、建学の精神を「理学の普及を以て国運発展の基礎とする」としてきたのが我々の大学です。理科教育、数学教育の教員を養成する理学部中心の大学だったのですが、1960年代になると工学部や薬学部ができ、日本の高度成長を支える人材を供給するという使命を持ってきました。その後、1990年代に入ると、「研究の理科大」として、技術者と共に研究者の養成に力を入れてきたという歴史がありました。

 そして現在、安倍政権も掲げているように、アントレプレナー(起業家)をどのように育てていくかは国の大きなテーマになっています。その潮流のなかで、改めて東京理科大の役割を捉え直す必要があるというのが今回の取り組みの背景にあります。広く世の中の、アントレプレナーを志向する人々を教育する、サポートすることで産業の活性化に貢献するということですね。これは、必ずしも起業をする人間だけを育てるわけではなく、我々の教育を受けた人が大企業に就職したとしても、科学技術者として仕事をする上で、厚みが出てくると思うんですね。

 産学連携という観点で言えば、アントレプレナーの育成、ベンチャー企業への出資などを通じて、従来からの企業との結びつきがさらに活用できることにもつながるでしょう。工学部、経営学部での教育の下地に加えて、起業家がどんどん生まれて企業と結びつくことで、大学と企業との結びつきもより深くなるのではないかと考えています。

大企業もかつてベンチャーだった

まさに、大学と企業がどのように結びつくかという観点が重要になってきますね。

 (大学の研究成果を特許化し、企業へ技術移転する)TLO(技術移転機関)はこれまでも注力してきたのですが、シーズ(種)があっても、企業はそれを買ってどのようなビジネスにしていくかが分からないから上手くいかなかったんですね。今度はTLOで培われたシーズにビジネスモデルを付加しながらどのように外に売っていくか、それをTEICのサポートなどを通じて推進していくことが重要になります。

 MIT-REAPやTEIC以外にも、東京理科大に関わっている研究者に出資するための会社「東京理科大学インベストメント・マネジメント」が2014年に設立されました。有望なベンチャーには我々が出資しながら、経営指導や技術指導も行なっていきます。

 日本の産業の歴史を振り返れば、(アサヒグループホールディングス傘下のウイスキー大手)ニッカウヰスキーだってそうですが、多くの大企業や有力企業も、もともとはベンチャー企業なんですよ。今は多くの若者が大手企業に就職できる環境にはなっていますが、日本人にアントレプレナーシップ(起業家精神)が本質的に低いわけでは決してないと思います。意識改革を含めて、教育の環境を整えていくことがまずはスタートなのだと考えています。

起業家の支援について、これから東京理科大としてどのような役割を担っていきたいと考えていますか。

 まだ規模は小さいですが、今やっとスタートラインに立ったところだと思います。東京理科大が中心となって、当面は東京理科大の関係者にどのような価値を提供できるかを考えていかなくてはなりませんが、将来的には様々なところからの資金も集めつつ、外部にも開放していくことは考えています。起業についての多くの知見があり、アジア各国の若者たちが学べるようなアントレプレナーの中心的な拠点になっていってほしいという気持ちですね。