かつては同じ会社で定年退職まで勤め上げることが当たり前だった。だが転職するうえでのハードルは下がりつつある。企業も経営戦略の修正や新規事業への進出を図る上で、プロパー社員に頼らず、有能な人材を外から獲得する動きが加速している。企業にとっては適材適所に人材を配置しないと、優秀な社員に辞められてしまうリスクが高まっている。エン・ジャパンの調べによると、2月の管理職の求人数は6万3489件と、4年前と比べ約3倍に伸びている。ミドルの転職事業部の天野博文事業部長は「閉塞的な社風や停滞がちな事業を打破できる人材が欲しいというニーズは大きい」という。

 こうしたおう盛な転職需要もあり、実力が発揮しづらい職場と考えられてしまうと優秀な社員に逃げられてしまう。

 企業が打てる手は働きやすい職場づくりしかない。この課題を定量的に分析しているのが、インターネット広告大手のセプテーニ・ホールディングスだ。優秀な社員を確保し働き続けてもらえるように入社時から工夫している。

 内定時に、入社後10年間、どう活躍できるのかをシミュレーションした資料を渡す。そのなかにはいつどのようなことで悩みそうなのか、会社はどうサポートする予定なのかを詳細に書いている。上野勇取締役は「私達が採用したいのはセプテーニで活躍できる人材。しっかり分析して提示することで適材適所で働けるようにしている」と話す。

 同社では全社員が診断を受け、自分の適性を理解するように取り組んでいる。ヒューマンロジック研究所が開発したFFS理論をベースにしたものを活用している。FFS理論とは「受容性」や「拡散性」といった5つの因子などによって個人の思考行動パターンが分かるもの。個人とともにチームもどのような人材が多いのか分析しておく。これらのデータを元に、AIが主体となって適切な部署に配属するのだ。

 セプテーニでは職場で良質な経験を重ねることで社員は育成できると考えている。その必要な条件を「育成方程式」として定義している。職場環境はチームと仕事内容によって良し悪しが決まる。職場環境に本人の個性を掛け合わせることでいかに成長できるか可視化できると同社では考えている。「本人の個性と、チームの雰囲気や仕事内容との相性が高いほど、大きな成長が期待できる」(上野取締役)。

 そのため診断結果を基に112ある部署からどこに配属すれば能力を最大化できるかを考える。上野取締役は「やりたい仕事に加え職場の人間関係も整えるので、新入社員は辞めづらくなっている」と話す。

セプテーニは科学的に職場の雰囲気を可視化する