では、このネットフリックスが掲げる組織文化とはどういったものだろうか。それがネットフリックスのHPで公開されている「ネットフリックスカルチャー」という企業文化を文字にしたものだ。判断やコミュニケーション、好奇心、革新――。経営が苦しかった後から現在に至るまでの採用のあり方や、ネットフリックスで働くことの意味、求める行動や意識などを紹介。会社が目指す方向性と、求める志をオープンにすることで、同じゴールに向かって働く人材が集まるような仕組みづくりをしている。

中途面接は5回

 採用希望者はこのカルチャーを必ず読み、従うことができるかを確認される。「カルチャーは会社の個性です。これを読んで、共感したり、ワクワクしたりする人に来て欲しいと考えている」(松尾氏)。さらに、このカルチャーに沿っている人材かどうかを確認するために、面接は5回も行われる。1回あたり30分ほどの面接を、マネージャークラスや若手などさまざまな立場の人間が担当。複数の眼によって、採用希望者がスキルだけでなく、組織文化の観点において、ネットフリックスと合うかどうかの確認に時間をかけることで、会社と個人のミスマッチが起きるリスクを最小限にとどめている。

 しかし、変化が激しいIT業界。入社時に想定していた仕事とは異なる業務を任されることになった場合に、本人の希望と作業内容のミスマッチは起きないのだろうか。その点についても、松尾氏は「カルチャーにも書いてあるが、当社が目指すゴールは契約数を増やすこと、顧客に満足してもらうこと。そのゴールを目指す過程において、必要な仕事は、皆で助け合ってやると決めています。当社の従業員は、『その仕事は契約にないからできない』という言葉は言いません」と指摘する。

 そのため、従業員は、事業環境の変化に合わせて、自らのスキルが不足していると考えれば、自主的にスキル向上につながる講習やセミナーを探し、受講するという。さらに、社内では個人の仕事やスキルについて、気づいた点を指摘し合う「フィードバック・カルチャー」というものがあり、本来であれば言いにくい不満や改善すべきポイントなどを伝えることで、個人のスキル向上と、組織全体の生産性向上につなげる仕組みを構築している。

 日本でも人材の流動性が高まってきた中、多くのビジネスパーソンが新たな活躍の場を求めて、会社を移り始めた。しかし、採用時に重視されるのは過去の経験が中心で、転職先で当初想定していなかった仕事を任されたり、会社の方針と合わなかったり、雇用のミスマッチが起きているケースもある。ネットフリックスの取り組みは、こうした雇用のミスマッチを防ぐ1つのケースとなるだろう。