安い、面白い、意外!2016年4月から8兆円の新市場が開放される。
多くの事業者が家庭向けの電力小売り市場に参入する予定で、アピール合戦を繰り広げている。
すべて世帯に投票の権利があり、まるで総選挙のようだが、アイドルグループAKB48の選抜総選挙と違い、各社のアピールポイントが分かりにくい。
料金メニューも複雑だ。
そこで、各社の担当者に「でんき総選挙」への意気込みを聞いた。
でんき総選挙のトップバッターは東京ガスだ。
東京電力の対抗馬の最右翼で、「首都圏で電力供給のシェア1割」という目標は東電の闘争心に火をつけたと言われる。そんなライバル関係から、東ガスの料金サービスメニューへの関心は高い。
同社はその期待に応えるように、2015年12月24日に他社に先駆けて料金メニューを発表した。東ガスのガスと電気をセットで契約すると、東電の既存料金から年間4000~5000円安くなる(東京都の戸建住宅3人家族の電気料金の平均値392kWh/月を参考)という料金だった。会見には多くの記者が押し掛け、ほぼ満席だった。
そうした熱気とは裏腹に発表の内容は想定の範疇を超えず、インパクトに欠けた印象だ。その後の東ガスの反応から申し込みの状況は好調とは言えないようだ。
振り返ってみると、東ガスは電気事業への意気込みを語った当初から発言のトーンが下がってきている。同社の広瀬道明社長は「取り下げないが、高いハードルだ」と吐露している。
年明けから各社が相次いで料金を発表した後、ついに東ガスは2月1日に料金メニューを追加値下げした。上記と同じ使用量を前提として、東電の既存料金よりも年間で約1万円安くなる。
東ガス・事業革新プロジェクトの笹山晋一部長に戦略などを聞いた(取材は追加値下げ前)。
2016年4月以降の電力料金をトップバッターで発表しました。一番最初に発表することにこだわったのですか。
笹山:一番乗りを意識した訳ではありませんが、1月から先行予約できることは国が決めたスケジュールですから、そこで誰も受付をしていない事態は良くないと思いました。
先に出すと後から研究され、不利になることは分かっていましたが、誰かがファーストペンギンにならないといけません。

NHK連続テレビ小説「あさが来た」で主人公あさがそう言われてますね(筆者注:英語の慣用句。群れの中で最初に海に飛び込むペンギンのことで、リスクを負って挑戦する人を指す)。飛び込んでみて海の水はどうでしたか。
笹山:ちょっと冷たくてしょっぱかったですね(笑)。でも、みなさん続いて飛び込みました。いろいろあるけど、誰かが飛び込まないといけませんから。
問い合わせでは、初歩的なことを聞かれるケースが多い。「停電しないのか」「スマートメーターとは何なのか」「電線をもう一本引かないといけないのか」。冗談で言っているのですが、他社のために広報活動をしているようです。
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