「でんぷんは糖のポリマーですが、ポリフェノールもポリマーです。このポリフェノールを分解すれば、カテキンや赤色色素のようなものが取り出せるはずなんですが、従来の方法では烏龍茶だけはずっとできなかったんです」

 烏龍茶の複雑さは、過去に福井祐子さんに語っていただいた通り。
 そこで超臨界水を使ってみると「ただ単に面白かった」という。それが化学工学会賞技術賞を受賞する研究につながるのだが、「超臨界水というのは、温度が380度とか400度とかの世界なんです。それで、0.38秒で木材の85%を糖に変えられたりするのですが、0.38秒を制御するというのは難しく、均一性、生産性が保てないので、実用化の事例がないのです。一方で、僕らは食品なので、焦げてはいけないというルールがある。温度で言うと、油で何かを揚げたり、オーブンで何かを焼いたりするときの温度は200度くらいですよね。それから、『コラテラル・ダメージです』」

「俺の仕事と同じだ」

 主演のアーノルド・シュワルツェネッガーが演じるのはロサンゼルスの消防士。いろいろあって単身コロンビアに乗り込んで、さまざまな活躍をするという物語だ。

 「映画の中で、火事になったとき、火が壁の向こうからこちらに移るときの壁の表面温度が、確か、230度だと言っていました。『あ、俺の仕事と同じだ』と思って」

 そこを超えるとコントロールがしにくくなる。その上限が設定できると、やりやすいのだと中原さんは言う。その温度を上限に、高圧の水蒸気を利用したものづくりができないかと考えるのだ。

 ここで問題がひとつ持ち上がる。均一性、生産性を保ちながら、狙ったとおりの反応をさせる“反応場”をどうやって手に入れるかだ。反応場。理論を実践するには装置が必要だが、それまで実験室で殺菌のために使ってきた機械では130度くらいが限界で、200度には及ばないのだ。

 ヒントは映画館ではなく、食品とは関係のない機器の展示会で見つけた。そこへ出かけて行ったのは、それが元々食品用に作られていようがいなかろうが、反応場さえ作れるならばそれでいいからだ。

 出合ったのは、タオルのための機械だった。