社会人としての最初の仕事は「有用物質を作り出す微生物の分類同定」。「とても地味な仕事」だが、新しいビジネスのシーズをつくるための基盤づくりという意味では「やりがいがあった」と振り返る。

 酵母の研究に担当が変わったのは、それまで酵母の部門にいた先輩社員が結婚退職したのがきっかけだった。技術の進歩により今では1時間で済むような実験を、当時は1か月間以上かけて行っていた。以来、一時的に知財部門に異動したこともあるが、基本的には酵母一筋。

酵母からマラリアの特効薬なども

 児玉さんにとって酵母の魅力は「おおらかな生物」であることに尽きるという。

 「割と雑に扱っても生きていますから。たとえば、乳酸菌はちょっと気むずかしいところもあるんです。限られた環境でしか生えないとか。でも酵母は、わりとどこでも生えるし、物質生産もするし、過酷な環境に耐えられるよう自分を変化させることもできます」

 おおらかな生物は、可能性も秘めている。

 「酵母はお酒もつくりますが、製薬業界ではマラリアの特効薬などもつくるんですよ。マラリアの薬は、本来はその酵母がつくるような物質ではないんですが、酵母にいろいろな遺伝子を入れて道筋を整えてやれば、マラリアの薬の原材料をつくりだしてくれるんです。今は、希少な植物からしか抽出されない物質も同じような方法で、やはりつくれるようになっているので、すごいなって思っています」

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