ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典氏が、その重要性を強調した「基礎研究」。しかし、それに携わる人々は「研究所の奥で日々ひたすら研究にいそしんでいる」イメージで、その実像に触れる機会はなかなかありません。
 例えばメーカーの「商品開発」に関しても、脚光を浴びるのはヒットアイテムの商品化を手掛けた「商品企画」部門で、その基盤となった基礎研究にはなかなか光が当たりません。
 このコラムでは、メーカーの研究所で働く「基礎研究の人々」にお話をうかがっていきます。なぜメーカーで基礎研究をすることを選んだのか、なぜその研究テーマを選んだのか、日々どんな研究生活をしているのか、手応えや悩みは? などなど、知られざる生態に迫ります。
 今回訪れたのはサントリーワールドリサーチセンター。2015年5月、京都府精華町に新しい研究開発拠点として作られた「基礎研究の館」です。

 「特に男子のフィギュアスケートが盛り上がったのはここ10年ほどですが、それ以前から、自分はコーチや振付師など、スケートを職業にして食べていこうとは考えていませんでした」

ゲームづくりに憧れたフィギュアの“カン様”

 日本代表として国際大会に出場した経験がある、1982年生まれの元フィギュアスケーターがそう語る。彼の名は神﨑範之さん。ヨン様人気を爆発させた『冬のソナタ』のテーマに合わせてエキシビションを演じた経緯から、ファンからは“カン様”としても親しまれている人物だ。現在は、国際スケート連盟公認の技術役員という立場でスケートに関わっている。

 スケートを始めたのは小学校1年生の時。両親が大学時代にフィギュアスケートの部活に入っていた影響だという。低学年の頃は、給食を食べ終わるのが誰よりも遅く、みんなが掃除を始めても頑張って食べているような子だったが、スケートを続けるうちに体や食事に人一倍興味を持つようになった。「今思うと、高校生ぐらいからサプリを飲んでいて、周囲よりも気を遣っていたと思います」。だからサントリーに就職しようと決めた、わけではなくて、当初は別の将来を考えていた。

 「ゲームをつくる人になりたかったんです」

 スケートだけでなく、ドラゴンクエストやマリオカートにも夢中になり「タイムがいい人は何かもらえる、といった企画に応募したこともある」という少年時代の神﨑さんは、本気でゲームをつくりたいと考え、ゲームをつくる企業へ就職することを決意。高校3年次には「ゲーム=理系だろう」と物理を選択し、情報系学科を目指して大学受験をするが失敗。再挑戦のために浪人生活を送るうちに、興味も経験もある体や食事のことを学ぶのもいいのかなと思うようになった。

サントリーウエルネス 健康科学研究所 NR・サプリメントアドバイザー 博士(人間・環境学) 神﨑範之さん(写真:行友重治、以下同)