「ヒトもカネも突っ込んでいる」

 確かに、凄そうな感じはする。ただ、ドローンや、3次元のシミュレーションなど「今までに全く見たことがない技術か?」と聞かれると、そんなこともない。売上高で国内2位の日立建機にも同様の技術はあるだろう。他の建機メーカーは、コマツと同じような取り組みをしていないのだろうか。

 様々な建機メーカーと取引をしている大手ゼネコンの担当者に聞くと、こんな答えが返ってきた。「個別の要素技術は、多かれ少なかれ(建機メーカーの)皆さんが持っていますよ。けれど『全部サポートする』っていう打ち出し方は今のところ、コマツが突出している。建機やシステムに多大な投資をしているし、外から見ているだけでも、ヒトもカネも突っ込んでいるのが分かる」。

 実際、コマツにとって、スマートコンストラクションは「超」がつくほど重要な新規事業だ。

 連載3回目のGE編(こちら)で、コマツがただ機械を売るだけでなく、「顧客をもうけさせる」ための事業領域まで手を広げていこうとしている、という記事を書いた。GE編では鉱山での取り組みに触れたが、スマートコンストラクションは、言わばその土木工事版だ。そして、新しい事業領域に踏み出すために、事業の進め方もがらりと変えている。

子会社から抜擢した意味

 それが顕著に現れたのが、人事だ。

 2014年の暮れ、コマツの大橋徹二社長は、子会社のコマツレンタルで社長(当時)をしていた四家千佳史氏に頭を下げた。「こっちに来て、スマートコンストラクションを仕切ってくれないか」。四家氏は翌年1月にはコマツ本体の執行役員に抜擢され、スマートコンストラクション推進本部長として、新事業の「顔」になった。

スマートコンストラクション推進本部長に抜擢された四家千佳史氏(写真:陶山 勉)

 本誌特集でも詳報した通り、四家氏はもともと、自分で建機のレンタル会社を経営していた人物だ。コマツからの出資を受け入れて2008年にグループ入りしたが、その後もレンタル事業を担当し続けており、本体の役職には就いていなかった。

 四家氏に自身の役割について聞くと、「コマツに、5倍、10倍のスピードで動くもう1つの『時計』を持ち込むことだ」と話す。そのために意識しているのが、「80点の出来でもどんどん出して、残りの20点分は顧客の反応を聞いてすぐに反映すること」(四家氏)。安全さえ担保することができれば、「もっと低い点数で出してもいい」(同)とさえ言う。