次に、竹谷社長が持っているタブレット「iPad」をのぞかせてもらった。赤や黄、緑色の印がついた現場の空撮写真が映っている。工事の進ちょく度合いが、場所ごとに色分けして示されているのだ。さらに、画面の下部には円グラフも付いていて、全体の何%まで工事が進んだかが分かる。

工事のデータは更新され、竹谷社長のiPadから見ることができる(写真2枚とも:都築 雅人)

 これらの情報は、渡部さんが運転していた油圧ショベルやブルドーザーから送信されたものだ。建機に通信機能が付いており、1日の終わりに、その日の油圧ショベルの掘削データや、ブルドーザーの整地データをクラウド上のシステムに吸い上げて、iPadの画面を更新している。通信機能のない他の建機で作業した場所があっても、油圧ショベルの運転席に付いているステレオカメラで地表の様子を撮影すれば、その情報も反映される。

 「今までは毎日写真を撮って進ちょく状況を報告してもらっていたけど、ひと目で分かるようになった」と竹谷社長は話す。30分ほどかかっていた報告作業の手間がなくなったため、1つの現場に必要な人手を減らすことができたそうだ。レンタル代が通常の3倍したり、ベテラン職人に比べて半自動運転時の作業スピードが遅かったりといった課題はあるものの、「うちは若い社員が多いので、新しい技術にどんどん挑んでいきたい」と竹谷社長は意気込む。

工事のすべてに関与する

 半自動運転に、ITを使った精緻な現場管理──。「職人の勘と経験」がモノを言うイメージが強い従来の土木工事とは、どうやら大きな違いがありそうだ。

 「いったい、工事の全体像はどうなっているんだろう」。独り言をつぶやくと、この現場に建機を貸し出したコマツの子会社、コマツレンタル北関東営業部の柴山欣也氏が経緯を説明してくれた。

 「明和梅原地区下流築堤工事」と呼ばれるこの工事が始まったのは、2015年の10月だった。工事の直前、柴山氏は現場の担当者とともに、カメラが付いた1台のドローンを飛ばした。河川敷の上空から工事現場を撮影し、地形の3次元データを作成。それを堤防の設計データとすり合わせて、どんな工事が必要か、どれだけの土を外から運んでくる必要があるか、といった施工計画をシミュレーションした。

ドローンを飛ばして地形を調べ、3次元データを生成(いずれもイメージで利根川の現場ではない)

 そうやって作成した施工データを、油圧ショベルやブルドーザーに読み込ませている。だから、これらの建機は施工計画どおり、半ば自動で動かすことができるのだ。工事の途中で堤防の設計に修正が加わったら、データを書き換えて施工計画を更新するだけ。「建機を貸したり売ったりするだけでなく、土木工事にまつわる様々なことをコマツがサポートする。それを、スマートコンストラクションと呼んでいます」と、柴山氏は胸を張る。

「工事にまつわる様々なことをサポートする」と話すコマツレンタル北関東営業部の柴山欣也氏(写真:小林 靖)