コマツがやらないこと

 もっとも、コマツがGEと近づいたのは、ビジネスモデルを強くするのに格好の相手という理由だけではなさそうだ。コマツの経営陣を取材するなかで、GEに対する2種類の発言を聞いた。

 一つは、「コマツとGEは結構、文化が似ている」(大橋社長)というものだ。それは、ITやデータ解析の重要性を理解して、活用しつつも、ハードウエアを磨くことも重視している点だそうだ。確かに、GEのイメルト会長は2014年12月の日経ビジネスの特集記事で、「デジタル時代になり、多くの人はモノ作りがどれほど大変なのかを忘れてしまっている」と語っていた。日本企業でさえ製造現場の劣化がささやかれるなかで、こうした共通点があるから、互いに手を携えやすかったのだろう。

 一方で、コマツとは対照的な面もある。取締役ICTソリューション本部長の黒本和憲氏の発言が印象的だ。

黒本氏:GEほど巨大な企業がここまで大きくカジを切るのか、とそばで見ていて、驚異に感じた。自らを切り刻むように金融部門を売り払い、ソフトウエアに巨額投資をして、自分たちを改造しようとしている。

GEの変身を「驚異だった」と語るコマツ取締役ICTソリューション本部長の黒本和憲氏(写真:陶山 勉)

 コマツの経営陣は自社の事業領域について「建設機械と鉱山機械以外に手を出すつもりはない」と明言し、「収益も大事だけど、コミュニティや雇用も大切だ」と、口をそろえる。これらは「ダントツ経営」を掲げた坂根正弘相談役の社長時代に明確になった方針で、同社の成長を支える原動力にもなった。だから、コマツはドラスチックに事業を変えることを望まないし、できない。

 しかし、世界にはコマツとは異なる方法で、新しい価値をもたらそうとするGEのような企業もある。製造業の巨人の急激な変化を目の当たりにして、コマツは彼らを敵に回すのではなく、むしろ手を組むことを選んだのではないだろうか。

組むか、買うか

 最後に、GEのソード氏に一番気になっていたことを聞いた。

「強いところにフォーカスする」と語るソード氏(写真:都築 雅人)

記者:GEほどの大企業ならば、どこかの鉱山機械メーカーを買収して鉱山会社に提案をするほうがコマツと組むより手っ取り早いのでは?

ソード氏:それは常に、GEも自問しています。けれど、いつも同じ結論になる。コマツは(鉱山機械という)彼らの領域でとても競争力がある。より高い価値を顧客に提供するためには、GEは自分たちが強いところにフォーカスしていった方がいい。コマツも同じ結論に至ったのではないでしょうか。

 早速、デスクに報告の電話だ。「GEとコマツの提携。誰と組むことが、お客さんにとって一番良いかを考えた結果だそうです」。

 「それはどんな仕事にも通じることだな。1人でできることは限られている。少しでも良い原稿になるように、記者のお前もデスクとの俺と組んでいる。そもそもだな、お前は…。おい、聞いてるのか?」

 携帯電話の電波が急に弱くなったらしい。デスクとの電話は運悪く?途切れた。