大橋社長の決断──。それを読み解く前に、鉱山機械を取り巻く環境を確認しておこう。連載1回目では中国が「新常態」を迎えて、建機需要が低迷していることを書いたが、鉱山機械では資源価格の下落が逆風になっている。下のグラフの通り、2015年度の需要は最盛期の2011年度と比べて約4分の1となる見込みだ。鉱山の運営会社が儲からず、新しい機械を発注するような状況ではなくなってしまった。

資源価格が下落し、鉱山機械の需要は低迷

 コマツには「2016年度も機械への新規投資は厳しい」という声が顧客から寄せられており、同社の業績を停滞させる大きな要因になっている。

 GEとの提携拡大が目立ち始めたのは、鉱山機械の需要低迷が顕著になった2014年頃からだ。2013年4月に就任した大橋社長が需要の減少局面で決断したこと。それは「ただ機械を売るのではなく、もっと、お客さんが儲かるようにコマツの動き方を変える」ということだった。

顧客が儲かるように動く

 大橋社長の考えを示したのが、2月15日号の本誌特集にも掲載した下の図だ。

コマツは顧客と一緒に儲ける方策を考える

 中国編大阪編では、アフターサービスやモノ作りといった、自分たちの基礎体力を鍛える現場を突撃した。図ではグレーの矢印にあたる。それに加えて、コマツは今、顧客の事業にもっと積極的に関わることで「再攻」を目指そうとしている。図では青色の矢印にあたり、顧客を儲けられるようにすることで、コマツも機械や付随サービスの販売を伸ばすという考え方だ。

 鉱山会社の経営効率を高めたいと本気で考え始めた時に、コマツだけでできることの限界が分かってきた。

 例えば、コマツは自動走行ができるダンプトラックを提供して輸送コストを削減できるとうたってきたが、鉱山会社は採掘した鉄鉱石をダンプトラックに積んで運んだ後、鉄道で港湾施設まで運び、船積みをする。「輸送プロセス全体で見れば、ダンプトラックだけでできる効率化はたかが知れている」(資源ビジネス関係者)。発電設備や水処理装置の性能を高めることも、鉱山全体の生産性向上には必要だ。

 実は、鉱山向けの鉄道や発電設備、水処理装置はGEが得意とする製品群だ。「コマツはGEとパートナーを組むことで、鉱山に関するすべてのデータを統合した成果を、顧客に提供できるようになる」とGEのソード氏は言う。ダンプトラックの使い方に関しても、「コマツが集めたデータに、GEが航空機エンジンや医療機器で蓄えてきた解析の知見を組み合わせれば、故障予知などでさらに効果を発揮できる」(ソード氏)。

 チリでの実証実験では、顧客のダウンタイム(操業を停めている時間)を数%減らすことができた。両社は現在、どのように鉱山会社へサービスを提供していくかを詰めているそうだ。