生産が少ないからこそ改革できる

 大阪で生産技術開発センタを歩き回っていて、あることに気がついた。タブレットについて説明してくれた入社4年目の齋藤氏をはじめ、つながる工場のプロジェクトには、20代、30代の若手社員の姿が目立つのだ。これには、今だからこその理由があった。

つながる工場は若手中心に推進(写真:行友重治)
つながる工場は若手中心に推進(写真:行友重治)

 連載1回目で、2015年度の中国の建機需要は最盛期だった2010年度と比べて5分の1以下になる見込みだと書いた。この影響は中国国内の工場にとどまらず、中核部品を作っている日本の工場の生産量も減少させている。

 そのため、粟津工場(石川県小松市)や小山工場(栃木県小山市)など日本各地の生産拠点から多くの若手社員が生産技術開発センタへ修業にきているのだ。生産技術開発センタの陣容は3年前の110人から200人まで増えた。

 いま、みどり会の企業から寄せられたタブレットの使い勝手に対する要望を反映してアプリをアップデートしているのは、ITに詳しい若手たちだ。

 「生産量が少ないのは良いことではないが、仕事がパンパンの時にはできないことを今のうちにやる」と栗山所長は言う。工場がフル稼働している時は、目の前の注文をこなすのが優先のため、設備に手を入れるのは難しい。みどり会に新しい挑戦をお願いするのも、同様だ。「今は仕込みの時期です」(栗山所長)。柔和な目の奥に、転んでもタダでは起きないという「再攻」への意志が垣間見えた。

 部品の調達や生産は華やかな仕事ではないが、メーカーにとっての体幹だ。今のうちに体幹を鍛えておかなければ、姿勢も悪くなってしまうし、激しく動き回らなければいけない時に体がついていかない。

 大阪からデスクへ報告のメールを書く。「確かに、コマツは体幹トレーニングしていました。部品メーカーともつながって鍛えることが大事なんだそうです」

 ほどなく返事がきた。「仲間がいると、トレーニングやダイエットも続けやすいもんな…」。

 あれ、お好み焼きを食べて帰ろうとしたのが、ばれたか…。

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