開発現場には、量産工場のようにたくさんの工作機械が並んでいた。

 特徴的なのは、工作機械の一つひとつに外付けのタブレット端末が付いていることだ。タブレットには、1週間分のスケジュール帳のような画面(下図)が表示されている。

機械がいつどれだけ働いたかが、タブレット上で分かる。
機械がいつどれだけ働いたかが、タブレット上で分かる。

 じっと見ていると、担当の齋藤尚登氏が説明してくれた。「この情報は工作機械(の制御装置)から吸い上げたもので、いつどれだけ加工していたかが見えるようになりました。同時に、工作機械が停止している時間も分かるので、どうカイゼンすべきかを考えることができます」。

 例えば、タブレット画面上に赤色で表示されている停止時間が適切かどうかを分析する。停止時間を減らすことができれば、より効率的に機械を使えるようになるというわけだ。栗山所長の言う「カイゼンしろ」である。生産品目を切り替えるタイミングを変更するなど、既に効果が出た現場があるという。

 タブレットに触れて画面を切り替えると、グラフや加工条件に関するより詳しい情報も出てきた。実はこれがミソだ。工作機械の制御装置から吸い上げたデータをそのまま羅列するのではなく、パッと見て分かる情報に加工してから、タブレットに表示している。データの見せ方を工夫することで、工作機械にもともと付いている制御装置を見るだけではよく分からなかった「カイゼンの種」を、探せるようにするのだ。

「コマツだけ」にとどめない

 自社工場に生産管理ソフトを導入すること自体は、すでに日本の大企業の多くが取り組んでいる。コマツが独特なのは2015年度から、このタブレットを「みどり会」と呼ぶ協力企業群の工場にも広めつつあることだ。齊藤氏がパソコンを開くと、コマツの自社工場に混じって、○○工業、△△製作所といった協力企業の工場にある機械の稼働状況が一覧になって現れた。「つながる工場」というのはコマツの自社拠点に限った話ではない。

 「みどり会とつなげることで、個別の改善にとどまらず、需要動向から調達・生産までの全体最適を考えられるようになる」と栗山所長は言う。裏を返せば、調達額の75%(注:日本の場合)をみどり会に依存している以上、完成品メーカーが1社でできることは限定的だと考えているのだ。現在は社内とみどり会を合わせて、工作機械で100台、溶接ロボットで400台を管理できるようにしており、それぞれコマツが「重要」と位置付ける工程の20%、50%をカバーしている。

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