日経ビジネス2月15日号特集の「コマツ再攻 『ダントツ』の先を掘れ」に連動し、「再攻」の現場を突撃取材するオンライン連載。2回目は、コマツの工場や生産技術の拠点がある大阪編だ。

 「『高齢車』とはシャレが利いているな。コマツには関西人が多いのか?」。建設機械の需要が低迷する中国で見た「再攻」の現場(こちら)について報告すると、デスクが好奇心に満ちた顔で聞いてきた。

 コマツの笑いのセンスを取材しろとでも言い出すつもりだろうか。「まあ、大阪にはマザー工場の一つがありますからねえ」と適当に相槌を打つと、デスクの目の色が変わった。「この前ジョギング仲間から、コマツが大阪で『体幹トレーニング』をしているって聞いたぞ。におうな」

 体幹トレーニング…。それは初耳だが、確かに、大阪には気になる動きがある。コマツが再び攻めるために「つながる工場」を作るプロジェクトが動き出しているらしいのだ。

 

 いずれにしても、自分の目で確かめたほうが良さそうだ。慌てて、新幹線に飛び乗った。目指すは、コマツの大阪工場(大阪府枚方市)にある「生産技術開発センタ」だ。

大阪発・つながる工場

 「どうして、『つながる工場』を作りたいんですか?」。

 生産技術開発センタに着くと、まずは所長の栗山和也氏を直撃した。

 つながる工場──。2014年頃から、「将来の工場の姿」として、日本でもよく耳にするようになったバズワードだ。まさか流行に乗るためではないと思いつつ、ここを押さえておかなければ話が始まらない。

「伸びしろ」ならぬ、「カイゼンしろが沢山ある」と話す栗山和也所長(写真:行友重治)
「伸びしろ」ならぬ、「カイゼンしろが沢山ある」と話す栗山和也所長(写真:行友重治)

栗山所長:建機の生産量ってどれぐらいか知っていますか?

記者:需要動向で大きく変動しそうですが、1つの生産ラインで月に数百台でしょうか。

栗山所長:そう。数万台作る自動車と比べて、2けた少ない。

記者:あの、つながる工場と関係があるのでしょうか。

栗山所長:「カイゼンしろ」が大きいってことですよ。今までは(量が少ないから多少効率が悪くても)仕方ないと考えていたけど、IoT(Internet of Things=モノがインターネットにつながっている状態)のような道具を使えば、もっと筋肉質にできる。コマツがつながる工場を作る狙いです。

記者:つなぐだけで、そんなに変わりますか?

 半信半疑の顔をしていると、栗山所長がにやりと笑った。

栗山所長:開発現場へお連れしましょう!

次ページ 「コマツだけ」にとどめない