中国で起きた、建機とコマツの構造転換

 もちろん、新車が売れている時期からアフターサービスにも力を入れておくべきだ、と思う人もいるだろう。同様の反省は、コマツにもある。ただ、膨大な量の建機をきっちりと作るだけで手一杯という状況では、アフターサービスにまで人を振り向けられなかったのが、現実だった。

 しかも、中国はごく短い期間で、累計の稼働台数が爆発的に増えた地域だ。コムトラックスの通信台数は2005年には、5000台しかなかった。アフターサービスの獲得率が他地域と比べて低くても、以前は業績に大きな影響を与えることはなかったのだ。それが10年経って稼働台数は16倍になり、重要性がぐっと増した。いま、中国総代表の市原氏は「宝の持ち腐れを止めよう!」と語り、中国の従業員たちの意識転換を図っている。

「高齢車」などへのサービス強化のために、1月に専門部署を設置。意識転換を図っている
「高齢車」などへのサービス強化のために、1月に専門部署を設置。意識転換を図っている

 中国が「新常態」の政策を維持する限り、中国で建機の需要が劇的に回復することはないだろう。本誌特集でも少し触れたが、コマツの油圧ショベル工場の一つでは、1日当たりの生産台数が5年前と比べて10分の1の6台に減った。本来160m近い長さがある組み立てラインを半分止めて、生産効率を少しでも落とさないように腐心していた。以前は外注していた設備の修繕も経費抑制のため、数年前から社内に取り込むようになった。仕事がなく工場内の「道場」で溶接技能を学んでいた従業員は今後も、その訓練を続けざるを得ないかもしれない。

従業員は技能研修に精を出している
従業員は技能研修に精を出している

 ただ、2013年度から少しずつ進めてきたリストラや、工場で積み重ねている固定費の削減によって「今の需要規模でも、黒字を出せる体制にはなった」と市原氏は言う。3年後には4万8000台まで増える高齢車を皮切りにアフターサービスを収益源に育てることができれば、反転攻勢は不可能ではない。

 「コウレイシャ」を合言葉に、中国では、新常態にひるまぬ挑戦が始まっている。

 「中国市場の再攻は、高齢車がキーワードでした」。

 取材を終えて、日本にいるデスクに電話した。「は?中国が最高だって?高齢者って、オレはまだ40代だぞ!」という返事。会社に戻ったら、説明しなくては…。

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