顧客が使った部品を分解
1人はエンジンに使う「スターター」や「オルタネーター」と呼ばれる部品をパーツごとに分解し、品質をチェックして箱により分けていた。もう1人の従業員はエンジン部品ではなく油圧シリンダーを分解しており、やはりパーツごとに選別している。


いずれも、故障などを理由に、顧客から引き取った部品だ。壊れたパーツを新しいものに取り替え、使えるパーツだけを再利用することで、新品同様の性能を再び引き出すのが、この部門で働く従業員たちの役目。コマツが「リマン」と呼んでいる部品の再生事業で、中国では2014年半ばから少しずつ、取り組み始めたという。
「いったい、何のために?」
そう聞くと、案内役の従業員からこんな単語が返ってきた。
「コウレイシャですよ」。
コウレイシャとは何か
コウレイシャ。
年明けに中国に来て、コマツ関係者の取材をし始めてから、頻繁に耳にするようになった単語だ。
例えば、中国の生産・調達を統括している信原正樹氏への取材では、「昨年11月から、各工場の部長クラス12人を6つの代理店に送り込んでいる」という話を聞いた。工場での改善活動に慣れた人材が販売の最前線に出ることで、顧客の建設現場にも改善を提案し、コマツへの信頼を高めてもらうための活動である。代理店に派遣したメンバーが特に狙いを定めているのが、コウレイシャなのだそうだ。
上海市にある中国本社では王子光総経理から、データ分析の得意な人材と現場に詳しい人材の混成チーム「情報資産応用部」を今年1月1日付で作ったという話を聞いた。11人からなるこのチームでも、コウレイシャ向けのサービスを考えることが「重要な任務」(王氏)になっていた。2015年春に開発したスマートフォンの修理依頼アプリについて説明を受けた時も、コウレイシャとの接点を増やすことが大きな狙いだと聞いた。
そして、コウレイシャの話をする時は皆、誇らしそうな顔をする。コマツが中国での逆風に立ち向かうための、キーワードに違いない。
けれど、コウレイシャとはなんだろう。中国の建設業界で「高齢者」の建機オペレーターが増えているという話はあまり聞かないし、高齢者向け携帯電話のように、操作ボタンが大きな建機を出すという噂も聞いたことがない。中国語のピンインで当て字を想像してみても、ピンとくる漢字が思い浮かばない。
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