そして2007年、島根県隠岐郡海士町が「第四次総合振興計画」をスタートしようとしたとき、関教授が海士町の町長に、「studio-Lなら住民とのワークショップをしっかりやって提案書をまとめてくれる」と紹介。これをきっかけに、初めて元請けとして契約を結ぶことができた。

 こうして「島の幸福論」と名付けられた海士町第四次振興計画がスタート。同計画をまとめた提案書は2010年度のグッドデザイン賞に選出され、コミュニティーデザインは世に広く知られるようになっていった。山崎氏は、「これでやっと自信を持つことができた」と語る。

 本当にやりたいことを最初からできるわけではない。だから、それなりの準備、種まきがいる。山崎氏の場合は、家島の押しかけワークショップがそれだった。そこから人脈がつながっていった。

手渡しできる販促ツールを作る

 ほかにもコミュニティーデザインを広めるための手を打った。仕事を発注してくれる先輩に、「ワークショップをからめながら設計を進めませんか」と提案。先輩はクライアントであるデベロッパーや役所などに働きかけてくれた。

 すぐにはクライアントを獲得できなかったが、家島の事例や海士町での活動が知られ始めた2007年頃から、「ワークショップを頼めないか」と言い出すところが出てくるようになった。山崎氏は当初、先輩事務所の下請けのワークショップ担当としてクライアントの前に顔を出した。だが次第に、先輩には設計の仕事を、ワークショップはstudio-Lに直接発注されるようになった。

 山崎氏は、「自分たちが手掛けた仕事をドキュメンテーションし続けることが大切」と言う。家島では、住民たちと仲良くなった写真、ワークショップの様子などを撮影し、それらを計5冊の冊子にまとめた。そして山崎氏が講演会などに呼ばれると、来場者全員に冊子を配り、「僕らはこういうことをやりたいんです」とコミュニティーデザインの認知拡大兼販促ツールとして活用した。

 現在、studio-Lのメンバーは約25人。社員ではなく個人事業主として、studio-Lに集結している。山崎氏は、「我々の仕事は予算、経費管理など経営者的感覚がないと務まらない。それで個人事業主の集団にした」と語る。

 例えば総額1000万円の仕事なら、法人管理費として20%をstudio-Lに入れ、仕事を取ってきたメンバーと企画を立てたメンバーが10%ずつ取る。プロジェクトリーダーは25人の中から必要なメンバーを選び、残る600万円から100万円、200万円などとそれぞれに発注し、残りを取り分とする──といった具合。メンバーは発注額の中で利益、経費が出るように予算管理して仕事をこなす。ギルド的なユニークな経営形態だ。

[日経デザイン 2016年10月号の記事を再構成]

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