2030年には新車販売の半分が「レベル4」以上の自動運転車になる──。

 こんな予測を示したのは、米コンサルティング会社のPwC Strategy&だ。米国、欧州、中国といった世界の主要市場で、自動運転車が年間4000万台規模で売れるようになるという。ハンドルを握る人間の運転手は不要となり、判断能力を備えたAI(人工知能)と半導体がクルマを操る時代がやってくる。

 自動車産業の収益構造も大きく変わる。産業全体の利益が2015年の4000億ドル(約44兆円)から2030年の6000億ドル(約66兆円)へと拡大する一方で、ハードウエアを製造する完成車メーカーや自動車部品メーカーの取り分は縮小する。自動車産業全体が稼ぐ利益のうち、20%を「シェアリングサービス」が、11%を「新技術/ソフトウエア」のサプライヤーが占めると、PwC Strategy&は試算する。

 完成車メーカーが頂点に君臨してきた従来の産業ピラミッドが、自動運転の普及を契機にきしみ始めた。ソフトやサービスを軸に、新たに創出される市場は膨大だ。ここにチャンスを見いだしたベンチャーが、相次いで自動車業界に参入している。

中国・西安の監視カメラ映像を示す、センスタイムジャパンの勞世竑(ラオ・シーホン)社長(写真:山田哲也)

 香港のAIベンチャーであるセンスタイムは2017年12月、ホンダと自動運転用のAIを共同開発すると発表した。武器とするのは画像認識技術。中国の公安当局が複数の都市で運用する、監視システムで使われているものだ。

 中国では大都市の主要な交差点にカメラを設置して、クルマや人間の動きを記録している。センスタイムジャパンの勞世竑(ラオ・シーホン)社長は、同社の画像認識AIを使えば「100台以上のクルマの動きをリアルタイムで把握できる」と話す。

 AIによる画像認識の精度を高めるには、膨大な「学習データ」が必要だ。監視カメラの映像を使って鍛え上げたAIを、自動運転車の「視覚」に活用しようというわけだ。ホンダはここに魅力を感じ、設立からわずか4年のセンスタイムと手を組んだ。(ホンダが頼った 中国公安の“視覚”

 参入するのはベンチャーだけではない。米国のインテルやエヌビディア、クアルコムといった半導体大手も新たな市場に攻め込んだ。半導体にソフトやセンサーを組み合わせ、自動運転の「プラットフォーム」を握るのが狙いだ。彼らのもくろみが現実になれば、未来のクルマは半導体の製品開発ロードマップに従ってモデルチェンジを繰り返すようになるだろう。その構図は、今のパソコンとうり二つだ。(頭脳狙う巨人達 日本勢にも活路

 自動運転車の普及は、周辺産業にも大きな変化を迫る。東京ハイヤー・タクシー協会によると、現在、タクシーの原価に占めるドライバーの人件費の比率は約73%。自動運転車の車両コストは従来と比べて跳ね上がるが、人件費を考慮すれば「5年程度で採算が合う」と日の丸交通(東京都文京区)の富田和孝社長は試算する。自動車保険や駐車場、カー用品といった業界にも様々な影響がありそうだ。(走る5000万台 笑う業界、泣く業界

 完成車メーカーも攻め込まれるだけではない。トヨタ自動車は1月、自動運転によるモビリティーサービス専用のEV(電気自動車)「e-Palette(イー・パレット)コンセプト」を打ち出した。先進企業の野望がぶつかり合う構図から、どんな未来が見えてきたのか。日経ビジネス2月12日号の特集では詳細に解説している。

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