老後はいくらお金があれば足りるのか?多くの人がこのような不安を抱えながら定年を迎える。しかし、少しの支出の見直しとほんの少しの労働で、その不安は解消できるという。お金のプロたちが、老後の幸せのコツについて語り合った。

そもそも老後にかかるお金って、いくらくらいなのでしょうか。今までの生活を維持できるかどうか、心配する人は多いと聞きます。

大江英樹氏(以下、大江):いくらかかるか考える前に、みなさん大事な視点を忘れてしまっています。多くの人が「出ていくお金」ばかり気にしていますが、「入ってくるお金」がどれくらいなのかという視点を忘れています。お金の出入りをトータルで考えないと、老後の生活設計はできません。

<span class="fontBold">大江英樹(おおえ・ひでき)氏 </span><br />経済コラムニスト。大手証券会社を定年退職後、オフィス・リベルタスを設立。行動経済学、資産運用、企業年金、シニア向けライフプラン等をテーマとし、執筆やセミナーを行う。日経電子版でコラム『定年楽園への扉』を連載。(撮影:陶山 勉 以下同)
大江英樹(おおえ・ひでき)氏
経済コラムニスト。大手証券会社を定年退職後、オフィス・リベルタスを設立。行動経済学、資産運用、企業年金、シニア向けライフプラン等をテーマとし、執筆やセミナーを行う。日経電子版でコラム『定年楽園への扉』を連載。(撮影:陶山 勉 以下同)

井戸美枝(以下、井戸):そうそう。現在どれぐらいお金がかかっているのか、今後、収入がどうなるのか、収支がまずわからないと、いくら必要でいくらあれば安泰なのかがやっぱり答えられないんですね。

 それに、今までとは考え方を変えなければいけません。これまでは単純に、例えば年金が月10万とか12万円もらえるとすると、あと10万円ぐらいあると20万~22万円になるから、だいたいの生活ができて、その毎月の不足分10万円を10年間くらい用意すればよかった。

<span class="fontBold">井戸美枝(いど・みえ)氏</span><br /> 社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー。社会保障、年金制度に詳しく、現在、厚生労働省社会保障審議会企業年金部会委員を務める。日本経済新聞、日経WOMAN、日経CNBCなどでライフプランや資産運用についてアドバイスを行う。著書多数。近著に「身近な人が元気なうちに話しておきたいお金のこと介護のこと」
井戸美枝(いど・みえ)氏
社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー。社会保障、年金制度に詳しく、現在、厚生労働省社会保障審議会企業年金部会委員を務める。日本経済新聞、日経WOMAN、日経CNBCなどでライフプランや資産運用についてアドバイスを行う。著書多数。近著に「身近な人が元気なうちに話しておきたいお金のこと介護のこと」

 それが人間の寿命が延びて、今後は100歳近くまで生きると言われています。人生100年時代を考えると10年分でいいのかなというのもあるし、そもそもどれくらい生きるかもわからない。だから「働いて老後をなくす」という発想が、ますます重要になってくると思います。

大江:定年後は年金という「何もしなくても入ってくる収入」と、働くことを組み合わせることで、ある程度の生活はできると思います。世の中、あまりにも出ていくお金のことばかり言い過ぎるんですね。1億円かかる、だから、3000万円ないとだめだとか。今、3000万円ないとだめだとか4000万円ないとだめだと言っていたらきりがないですよ。定年退職時、150万円しかなかった私なんかどうなるんですかという話ですよね。

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