モビリティーサービスの会社に

Hさん:トヨタの取材を続けていらっしゃる野地さんにお聞きしたいんですけど、トヨタの人たち、あるいは自動車会社の人たちと言ったらいいのかな、彼らは「自動車を売る」という意識なのか、あるいは、お客さんに「移動手段」というか、そういったものを提供する会社というふうに自らを定義づけてるのか、どうなんでしょう。やっぱり自動車というモノを売りたいというふうに固執してるんでしょうか。

野地:すごくいい質問。お仕事は…。

Hさん:Bさんとは別ですが、エネルギー関連です。

 かつては、電気は電力会社、ガスはガス会社、それが当たり前でしたが、今はガス会社が電気なども売る時代。生活に必要なエネルギーをどうするかを考えると、経済的にお得というのも重要だし、環境にやさしいかということを重視する人もいます。

 いろいろな選択肢が増える中で、「今まで通り」では立ち行かないわけで、自らが「転換」しないとモノもサービスも売れなくなっている。世の中みんなそうですよね。レコードがなくなってCDになって、パソコンからケータイに変わったりとか。

 自動車会社の場合は「移動手段を売る」とか「移動によって快適さを売る」とか、そういったふうに定義づければ、やれることはたくさんあるんじゃないかなと思うんですが。

野地:自動車の販売店にしても、かつてクルマがたくさん売れていた頃は、とにかくメーカーから届いた新車を売っていればビジネスが成立していたけれど、今、新車のマージンだけで食えるところなんてないんですよね。保険とか、車検とか、オイルの交換とか、フィルターの交換で食っている。

 そんな中で、トヨタに関して言えば、豊田章男社長は「ジャスト・イン・タイムからジャスト・イン・タイム・サービスへ」の進化を標榜して、「モビリティサービスの会社になる」と言っています。

Hさん:脱・製造。

野地:作ることを手放すのではなく、作って、売って、その先の便利さや楽しさを提供するところまで自分たちでやる、というイメージですね。

 しかし、これも簡単な話ではありません。今、働いている人たちに求めることを、Hさんが言うところの「転換」する必要があるわけですから。でも、2020年に出す予定の自動運転車「イーパレット」は貸し出す形になるということなので、どんどん転換は進んでいくのでしょうね。

安さより自分らしさ

Iさん:私は学生のときに免許を取って、けっこうクルマに乗っていたんですが、仕事が忙しくなって、気づいたら免許が切れていて、そのままクルマから離れてしまった者です。

野地:働き過ぎですね(笑)。

Iさん:働き方改革以前の話です(苦笑)。

 そんな私も、自動運転技術が進んだら、また乗りたいと思っていて、クルマというものはなんだかんだ言っても生き残っていくと考えているんですが、そのあり方はまた、変わっていくんだろうなと。

 若い人たちを見ていると、必ずしもただ安いものを買っているわけではなくて、服ならば、自分なりに似合うもの、自分にちょうど良い肌触りの生地だとか、ある種、「本人にとっての本物」というんでしょうか、そういうものを見極めて買っている。そんな人が多いように思うんです。

 クルマ好きは速さとか高級感といった価値観を大事にする人がいるとして、平均的に見れば、軽とか、小型とか、ほんとに自分の身の丈の動き、移動の範囲に合わせたものを購入していく層が増えていくんじゃないかなと。アパレルなどとも通じるところかなというふうに思っています。