新刊『トヨタ物語』の著者・野地秩嘉さんが、とある社会人勉強会に招かれた。講演の後、参加者との話題は「クルマに乗る人が減っているのはなぜか」。消費者・生活者の目線から考えてみた。

野地:今日は勉強会にお招きいただき、ありがとうございます。私は『トヨタ物語』を書くにあたって、工場に70回以上、足を運び、いろいろな人に話を聞きました。「トヨタ生産方式」とそれを脈々と引き継いできた人たちを通して、トヨタのモノづくりのあり方、強さの神髄に迫ろうとしてのことです。今年1月に発刊して、おかげさまで増刷を重ねていて、今は続編の取材を進めています。

 『トヨタ物語』ではトヨタグループの創始者・豊田佐吉さんから始まるモノづくりの歴史をまとめましたが、続編では「これから」について追っていきます。「EV」「自動運転」など、いろいろなキーワードがありますが、「販売のカイゼン」というのも大事なポイントのひとつです。

 生産の現場では「ジャスト・イン・タイム」「自働化」という2本柱の知恵が共有され、カイゼンを重ねることで、ムダのない生産体制を実現してきましたが、販売の現場ではまだまだ。現在、様々な取り組みが進んでいますが、販売に関わる取材をしながら、自動車業界にとって深刻な課題が、その深刻度を増していると感じています。

 それは「自動車に乗らない人が増えている」ということ。もうずいぶん前から指摘されていることで『トヨタ物語』の中でも触れましたが、ではその対策は? というと、自動車会社の人たちもいまだにつかめていない。

 今日は30代から50代の、働き盛りの方たちの勉強会ということで、そのあたりの話を少し聞かせてもらいたいと思っています。

免許は20%、所有は0.01%

 クルマを持っている方は手を挙げていただけますか?…半分ですね。では、3台以上買った人は…2人。5台以上は…1人。

 5台以上、買ったのはクルマ好きだからですか?

Aさん:クルマを運転するのは好きですが、マニア的に好きというのではありません。家族が増えたりとかそういうのも含めて買い替えを。

野地:なるほど。では、クルマを持っていない人で、免許を持っていない人は……2人。あとは、免許は持っているけれど、クルマは持っていない。

 先日、埼玉大学で講演会があって、学生100人に聞いてみたんです。すると、クルマを持っているのは、1人だけでした。地方にいくと生活に必要な度合いが高いから、家にはクルマがあるというところも多いと思うんですが、こと都市部に住む若い人については、クルマを持っていないのが普通という状況なんでしょうね。

Bさん:私は専修大学で講義をさせていただく機会があって、同じような質問を学生にしました。免許を持っているのが2割、クルマを持っている人はほとんどいませんでした。

野地:免許2割。どうしてその質問を?

Bさん:エネルギー関係の仕事をしているもので…(笑)。

野地:なるほど、切実な問題ですもんね(笑)。