「走り屋」副社長、サイコーです

野地:電気自動車とか自動運転になって、横山さんのクルマへの愛は変わるんですか。

横山:手を離しても走れるとか、別の乗り物として見る分には、それはそれで面白いと思うんですけど、やはりブオン!と響くエンジンの音とか、そういう官能の世界がなくなるのはちょっとさみしいというか。

野地:電気自動車は空吹かしもないし。

横山:そうなんですよね。まあ、これからの世代の人はそれが当たり前になっていくわけですよね。僕はいまだにガラケーなんですけども、あ、スマホが嫌いとかじゃなくて移行できないだけなんですけど、そんな感じの断絶は起きるのかなあというのは思いますけどね。

 フォーミュラEという電気自動車のレースを見てても何か面白くないんですよ。無音でシャー、シャー、ヒューッてモーターの音はするんだけど。まあ違う見方で見りゃ面白いのかもしれないけど、ちょっとまた別モノですね。

野地:ガソリンのレースカーがスタートするときは、動物が吠えてるみたいですもんね。

横山:そうなんですよね。まあタイヤは消費するし、ガソリンも消費するし、そんなに吹かさなくてもいいって言われちゃう時代なんでしょうけど。

野地:これまでは排気量で車の大きさってイメージできたけど、EVになったらどうなるんですかね。モーターが大きい、小さいなんですかね。

横山:ねえ。あとどのぐらい充電できるかによってグレードが変わるとか。テスラとかそうですよね。

 でもね、今年のル・マンのワンツーフィニッシュ、トヨタがやり遂げたじゃないですか。その前にすごいショッキングな、あともうちょっとというところで最後の最後にリタイアしてすっごい悔しかったから、僕も含め、みんな泣きましたよ、この間のル・マンは。勝利のエンジン音、やっぱり最高です。

野地:そのガズーレーシングを率いているのが、トヨタの副社長の友山茂樹さん。この本にも登場いただいていますが、この人が1日中でもクルマに乗っていられる人で、この間は動画が送られてきて、「ドリフト走行をし続けて、後ろのタイヤを潰した」って。副社長が自ら、タイヤがバーストするまで1日中クルマを乗り回しているという(笑)。

横山:ガソリン車的な、そしてFR車的な発想ですね。そんなことまでやっているのが副社長本人というのが、僕ら自動車ファンにとってはすごく頼もしいです。

野地:友山さんは「群馬の走り屋」だったというから。

横山:サイコ―、イイネ!(笑)。

 走るクルマというと日産のGT-Rもいいんですけど、ちょっと敷居が高すぎるんですよね。庶民が手が届かないじゃないですか。それがトヨタのハチロクなら、がんばれば買えるお値段で。

 あと、ガズーレーシングでワンメイクレースのシリーズ戦をやってますよね。あそこは予選に落ちた人にも敗者復活戦があったりとか、モータースポーツを身近にしてくれていますよね。で、そうしたレースからフィードバックできるようなクルマが市販されているということだから、また自動車ファンとしてはホッとするというか。

野地:この本ではモータースポーツのことは全然書いてないですけれど。

横山:いえいえ、ここに書いてあること、つまり、もっといいクルマを作ろうという情熱の、その先にモータースポーツがあるんだなという感じは、ちゃんと伝わってきました。