EV、灰皿、情熱

野地:EVになったらトヨタ生産方式って変わるのですか。

:いや、変わらない。

野地:造るのは一緒で、モーターになるだけで。

:うん。

野地:販売のほうも。

:うん。ただ、EVだったら充電の場所、FCVだったら水素の充填場所がなかなか増えていかない。そこへもってきて、過疎地ではガソリンスタンドが続々、廃業している。

野地:過疎地には自動車のインフラがなくなりつつあるということですか。

:そうです。それをどうするか。オリンピックにFCVを何台とか言っとるけど、道路はできとらんしね。インフラ整備が間に合うのかなと。昔の人は自動車を走らすだけでなく、日本中に道路とガソリンスタンドを整備したんですよ。それくらい考えてやっていた。EV、FCVの普及は自動車メーカーだけではできません。

野地:わかりました。では、林さんとしては今後の生調部はどうすればいいとお考えですか。

:まあ私のやり方がもう一回通用すればいいんだけど、そうもいかないしね。

野地:林さんのやり方というのは、例のパワハラモードですね。

:うん、尾上が言うんだよ。「なにしろ、林さんはこわかった。灰皿ぶつけられて怪我をした」。

 でも、あれは違うんだ。俺はうまく耳元をかすめて投げたのに、尾上がよけようとしたからいけない。

野地:でも、もうそれはできない。どうするんですか、今後は。

:いや、もう私だって、おだやかなもんですよ。大切なのは多少、厳しく叱っても、ケアをすることじゃないかな。大野(耐一)さんや鈴村(喜久男)さんもこわかったけど、必ずケアがあった。僕でも怒るときはきついけど、ちゃんと見に行きますからね。まあ、当時は僕でさえ、いじめにあってると思ったけど、今にして思うとちゃんと鍛えてくれたなと。だいたい先生とか上司は去ったあとに評価されるのがいいんだ。

野地:ああ、あの人はよかったなあと。

:そうそう。

野地:僕も林さんが部屋を出て行った後、「いい人だったな」と…。

:それがいいんだよ。できたら顔を見たくないやつのほうがいいこと言うよ。

野地:結局、当時はどうやって部下を鍛えたんですか。

:情熱ですよ。情熱だけです。おまえら、どいてろ、俺がやるわって。すると、真剣になる。見ていると、あっ、こういうことかとわかってくる。何度もそれをやるしかないんです。